「無期懲役では反省しない」死刑判決を受けた当事者の肉声 世界を取材をしてたどり着いた「死刑制度を残すべき理由」

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死刑があっても安全な国

 この言葉を聞いた私は、死刑か否かの確定が近づく前科なしの上村と、再犯で無期懲役となった礒飛の二人が、同じ凶悪犯でも性質の異なる存在に映った。人間性の差はもちろんある。だが、死を覚悟する上村からは、人への「情」を感じとることができた。

 死刑は、殺人事件を犯した人間が己を知り、己の罪と向き合いながら改心する力を与え得るものだ。死刑の目的が執行そのものであるならば、それは悪なのかもしれない。しかし、死刑には確実に「意義」が存在している。

 日本はこの先、欧米の問題も視野に入れながら、独自の死刑存廃議論を重ねていけばいいのではないだろうか。少なくとも、死刑があっても安全な国が、死刑がなくても治安の悪い国におもねらなければならない理屈を、いまの私は理解することができない。

宮下洋一(みやしたよういち)
ジャーナリスト。 1976年生まれ。米ウエスト・バージニア州立大学卒業。バルセロナ大学大学院で国際論修士、ジャーナリズム修士。フランスとスペインを拠点に世界各地を取材。欧米での生活は約30年に及ぶ。『死刑のある国で生きる』『安楽死を遂げるまで』『卵子探しています 世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて』等の著書がある。

週刊新潮 2023年3月23日号掲載

特集「『廃止』が潮流でも…世界を取材して辿り着いた 我が『死刑制度』存置論」より

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