「警察に対する抗議の自死ではないのか……」 レジオネラ菌騒動「大丸別荘」前社長の意外すぎる評判

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ワンマン経営の弊害

 山田氏の改革は成功し、負債は全額を返済。取引銀行から派遣された役員も帰っていった。経営に辣腕を振るったことは誰もが認めるところだったが、次第に弊害も出てきたという。

「卓越したリーダーシップが生むメリットとワンマン経営のデメリットは紙一重です。山田氏は腹の据わった名経営者でしたが、部下や周囲の人々の意見に耳を傾けないという致命的な欠点がありました。『自分が赤字の旅館を建て直したのだ』という自負も強すぎましたね」(同・知人)

 山田氏が「大浴場に消毒用の塩素を入れなくていい」と指示した際、反対した従業員もいたことが会見で明らかになっている。

《やっぱり入れた方がいいという人もいたし、必ずしも私の指示がいいと思っていたとは思わない。私の独断専行が原因になっている》(註1)

「ワンマン経営者でしたが、立派なこともたくさん成し遂げています。例えば、旅館周辺の道路で側溝の整備が不十分だったことがありました。それを山田氏は、自腹を切って整備しました。地元のために尽力しようという考えを常に持っていたわけです。それほどの男が自ら命を絶ったということが残念で仕方ないですね」(同・知人)

著名人に愛された理由

 Twitterでは山田氏の自殺を巡り、「そこまで思い詰めるのなら、もっとできることがあった」、「捜査の途中なので残された者に多大な迷惑かけてる」といった厳しい意見も少なくない。

「山田氏は一時期、市長と観光政策を巡って対立し、かなり険悪な関係になりました。ところが、一歩も退かない豪胆さを持っていました。簡単に自殺するようなタイプではないはずですが、やはり県警が家宅捜索を行ったことがショックだったようです」(同・知人)

 二日市温泉で塩素消毒を行っている浴場は、昔は皆無だったという。その“常識”に山田氏は囚われていたようだ。

「会見で山田氏は『塩素の匂いが嫌いだった』と口にして批判されましたが、私は彼の気持ちも分からなくはありません。県から指導されるのは仕方ないとして、警察沙汰になるようなことはしていないと彼は考えていたのではないでしょうか。絶望による自殺と受け止めた方が多かったようですが、県警に対する抗議の自殺という可能性もあるのではないでしょうか」(同・知人)

 いずれにしても、旅館の経営は新社長の手に委ねられた。だが、再び経営を立て直すのは大変だという。

「佐藤栄作元首相(1901~1975)は鉄道省の官僚時代、二日市駅の駅長を務めたことがありました。そのため“博多の奥座敷”と呼ばれた二日市温泉との縁が生まれ、佐藤だけでなく兄の岸信介元首相(1896~1987)も大丸別荘を愛したのです。昭和天皇(1901~1989)を筆頭に皇族方も多数お見えになりました。名だたる著名人に愛されたのは、炭鉱関係者など福岡の財界人が二日市温泉で大金を使い、サービスの質が高かったからです」(同・知人)

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