「資格」を通じ自信を持って働ける若者を育てる――中川和久(大原学園理事長)【佐藤優の頂上対決】

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校訓は「感奮興起」

佐藤 大原学園は自校での教育のほか、大学や会社に出向いて講義をされていますね。

中川 大学は全国76大学と提携して大学内で講座を実施しています。立命館大学の中には、大原の資格取得支援の事務局がありますし、山口大学には学内に大原グループの校舎があります。

佐藤 やはり中心は資格の講座ですか。

中川 はい。立命館大学では、大原の資格講座で学んだ学生の公認会計士試験合格者数が、2年目には約3割増加しました。

佐藤 もともと優秀な学生が多いでしょうから、やり方さえ学べばできるようになっていくのでしょうね。

中川 山口大学も公認会計士の資格講座などを設けています。山口大学からは、かつて私が公認会計士の講座で教えていた時の学生とのご縁で声がかかりました。

佐藤 大原学園と提携しようとする大学は、自分たちの学校に何が足りないかよくわかっている。

中川 一般企業には講師を派遣して、簿記などの実務を教えていますが、こちらはこれまでに延べ1424社、官公庁では143カ所で講座を実施しています。

佐藤 学外に出てこうした講座を実施されるのは、いつから始まったのですか。

中川 これもPCPと同じで、1990年代からです。ですから、もう長い歴史があります。

佐藤 一方で、地方にも学校を展開されていますね。これはいつ頃からですか。

中川 2007年の福井県からです。いまは33都道府県に47拠点あります。私どもは「地方の活性化」にも積極的に関わっていきたいのです。日本は東京一極集中により、首都圏と地方の格差がどんどん広がっています。例えば栃木県などの関東近辺では、18歳の若者の7~8割が進学や就職で県外に出て行く。そうなると地方活性化などできるはずがない。

佐藤 首都圏や関西圏以外は、どこも同じ問題を抱えているでしょうね。

中川 だから私どもが学校を作って地元進学のニーズに応え、就職でも70%以上は地元で就くよう働きかけています。

佐藤 それは重要な試みですね。

中川 いまの日本では、若い人がきちんと働けるようにするとともに、地域を元気にすることも必要です。

佐藤 中川理事長は非常に社会的な視点をお持ちですね。そしていまの日本に対する危機意識が強くおありになる。

中川 よく日本人は勤勉だといいますね。私もそうだとは思います。ただ、だからといって何の手立ても講じなくていいわけではない。就職、資格ありきではありますが、私どもはそれらを通じて子供たちが人生をきちんと生きていく方法を訓練する。そしてその過程ではみんなで協力し、助け合うことを身に付けさせる。実務教育とともに人格教育も行っているのが大原学園なのです。

佐藤 それをうかがうと、大原学園が教育産業ではなく、学校法人であることがよくわかります。

中川 私どもの校訓は「感奮興起」です。感動は感謝を育み、奮闘は成功の一歩となる。そして興味は才能を開花させ、起動で人は自立する。こうした私どもの教育がどこまで社会を変えられるか、ということをいつも考えています。18歳人口は112万人いるのに私どもの入学生は1年間で1万数千人です。だから非常に少ない若者にしか教育できていない。これをもっと強く社会に打ち出して、さらに多くの若者を教育していきたいと思っています。

中川和久(なかがわかずひさ) 大原学園理事長
1956年石川県生まれ。中央大学法学部卒。在学中に大原学園の公認会計士講座に通い、合格前から同学園で非常勤講師を務める。90年公認会計士試験合格後、正社員となり、約20年間簿記を教える一方、企業に出向いて簿記を教える「人材開発センター」や大学との提携などを進めた。2007年理事、17年より現職。

週刊新潮 2023年3月9日号掲載

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