単身赴任先で小料理屋の女将とデキてしまった48歳夫の苦悩 不意打ちの「ただいま」で妻子の表情が忘れられない

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弟から聞かされた娘の秘密

 1年前のことだった。珍しく弟から連絡があった。内緒で話があるという。

「仕事でときどき使う小料理屋で待ち合わせました。個室を予約しました。初めてでしたね、弟と飲んだのは」

 弟はいきなりスマホを見せた。マッチングアプリだという。よく知らなかった和紀さんだが、弟の説明を聞いて衝撃を受けた。

「娘が、いわゆる“パパ活”をしていたんです。弟が若い女の子を漁っているのは気になりましたが、それ以上に娘がそんなことをしていたなんて……。弟が知り合った女性を待っていたら、そこに娘が来たというんです。目印は赤いニット帽。周囲には他に赤いニット帽の子はいなかった、と。弟はすぐ逃げたらしいです。『オレもたいした人生歩んできてないけど、これはまずいよ、兄貴』と言われました。弟が意外とまともなことを言うのにも驚きましたが」

 だからといって娘に何と言えばいいのだろう。とにかく止めろと弟は言う。愛情が足りないんだ、オレが言うんだから確かだと弟は絞り出すような声で言った。

「こいつも苦労してきたのかと思ったら、なんだかかわいそうになりました。本当は妻とのことも聞きたかったけど、そのときはそれどころじゃなかった。まずは娘を救い上げなければと気持ちが逸りました」

 弟とはまたゆっくり飲むことにして、和紀さんはすぐに帰宅した。娘は自分の部屋にいるという。

「ノックしたけど返事がないので、ちょっといいかなと言いながらドアを開けました。娘はぶっきらぼうに『何?』って。『なんか困っていることはないか』と聞くと『何なの、急に。何もないわよ』と。『心配なんだよ』と言ったら、『単身赴任で羽を伸ばしていた人が何を言ってるの』と返されました。おとうさんは仕事だったんだよ、けっこう苦労したんだ、これでもと言うと娘は黙り込んだ。『きみについてよくない噂を聞いた。自分で責任とれる年齢じゃない。体や心を病んだらと思うと心配でたまらない』。そう言うしかなかった。それでも娘は黙っているので、しかたなく部屋を出て行こうとしたら、『おとうさんは赴任先で浮気してたでしょ。知ってるよ。由美さんって人』と言われて息が止まりそうになりました」

家庭が崩壊した瞬間

 どういうことかと娘に聞くと、和紀さんが赴任先から戻って以降、ときどき「由美」と名乗る女性から電話がかかってきたのだという。いつも酔っているような声で、「私は和紀さんとつきあっています。家庭なんて早く捨てたいって言ってますよ、いつも」などとくだを巻くらしい。

「レベルの低い女とつきあってるのねってお母さんが吐き捨てるように言っていたと娘から聞かされました。由美さんに裏切られたショックはあったけど、それを聞いた妻がなぜ僕に何も言わないのか疑問だった。やはり妻と弟はできていたんだと確信しました。僕と妻、どちらが先に裏切ったのかわからないけど、なんだかただ悔しくて」

 お父さんはお金を払ってないから「パパ活」じゃないのかな、と娘がつぶやいた。大人と子どもは違うんだと和紀さんは声を荒らげた。大人のほうがやることが汚いよと娘が追い打ちをかけてきた。

「さすがにもう黙っていられなかった。妻に『弟と関係があるのか』と聞いたら、妻が『あなたと由美さんみたいな関係?』と切り返してきて。ふたりともにらみ合って言葉が出なくなった。ふっと気づいたら娘と息子が揃ってリビングの入り口に立っていた。『ふたりともくだらねえな』と息子に言われました」

 家族が崩壊した瞬間だったと和紀さんは言う。希久子さんは「ちょっとしたケンカよ、誤解だから」と言ったが、娘は「お父さんが浮気していたのは、おかあさんも弟も知ってるじゃない、今さら隠す必要はないでしょ。私はお母さんもしているとは知らなかったけどさ」と言ってリビングを去って行った。

「その日は、とにかく子どもたちのために普通に暮らそうと妻に話しました。僕は今もきみを愛しているとも伝えた。でも妻の反応は鈍かったですね。由美のことを言わなかったのは、きみも後ろめたいところがあるからじゃないのかとも聞いたけど、満足な返事はなかった」

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