沼津バラバラ殺人、容疑者が事件前に見せていた“異変” 酔っ払いながら知人に語った内容とは

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“選挙ってどうやったらいいんですか”

 仕事の傍ら、積極的にJCなどの活動に参加していた伊藤さんには、密かに描いていた将来への青写真があった。

「昨年の夏ごろでしたかね。伊藤さんから“実は市議になりたいんです”と打ち明けられました」

 そう振り返るのは、さる磐田市議だ。

「彼女からは“選挙ってどうやったらいいんですか”などと相談を受けましてね。彼女自身、お子さんが生まれた後に離婚し、仕事と子育ての両立に悩んでいる様子でした。本当は子供たちとずっと一緒にいたいけど、仕事中に呼ばれたらすぐ駆け付けなくちゃいけない。子供が熱を出しても預ける所がない。だから、もっとやりたいことができる楽しい街を作りたい。政治家になって人のために働きたいと言っていました」

 実際、能力もピカイチだったそうだ。

「JCの活動では議案書作成やプレゼンを精力的にこなし、委員会でもリーダーシップを発揮するなど本気で街づくりに取り組もうとしていた。筋が通った子だと思いました。見た目のようにサバサバしたタイプではあったけど、困っているメンバーがいれば声をかける優しい面もあった。時に彼女は“私はこんなに頑張っているのに、周りは分かってくれない”とこぼすこともあったけど、周囲と歩調を合わせないとダメだと助言したら、“分かりました。ありがとうございます”と素直に聞く。折り目正しい子でしたよ」(同)

励ましていた矢先に

 さらに市議はこう嘆く。

「一生懸命JCで活動して、支援してくれる仲間を増やす時期だった。市議としてのビジョンをしっかり固めて、家族にもきちんと理解を得た上で準備をしていこうと話していたんです。選挙まで時間はあるので頑張ろうと、励ましていた矢先でした……」

 当選を夢見た磐田市議選は2年後に行われる予定で、新人候補として出馬する伊藤さんの晴れ姿が見られたかもしれない。はたして“死神”と出会ってしまった彼女の無念、いかばかりか。

週刊新潮 2023年3月9日号掲載

特集「「沼津バラバラ殺人 『政治家になりたい』シングルマザーの夢を奪った『不貞男』」より

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