名人挑戦かけ藤井五冠と広瀬八段がプレーオフ 2人とも今季リーグは2敗 その共通点は

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 3月3日、「将棋界の一番長い日」と言われる名人戦・A級順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)の最終戦が行われた。名人戦の挑戦者を決めるA級順位戦は、トップ棋士10人による総当たり戦。最終9回戦の全5局は江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の邸宅だった料亭「浮月楼」(静岡県静岡市)で一斉に開始された。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

両者譲らず

 最終戦では藤井聡太五冠(20)と広瀬章人八段(36)がともに勝利し、7勝2敗の相星で首位に。渡辺明名人(38)への挑戦権の決定は、8日のプレーオフに持ち越された。藤井と広瀬の公式戦の対戦記録は、藤井の10勝3敗である。

 順位戦は持ち時間が各6時間と長く、全ての勝敗が決まるのが深夜になることが多いため、「将棋界の一番長い日」と言われる。

 藤井は91手で午後7時52分に早々と勝利。その時点で他の4局は熱戦の真っ最中だった。「広瀬さんの結果を見てから寝ますか?」と記者に訊かれた藤井は、「局面にもよりますけど」とほほ笑んだ。

 藤井の対戦相手は名人戦挑戦権を獲得したこともある関西棋士の稲葉陽八段(34)。「角換わり」の展開となり中盤までは互角だったが、その後、稲葉の手に精彩がなく、藤井の攻撃にずるずると水をあけられてしまった。

 藤井がホテルに戻った後、広瀬が午後10時20分に菅井竜也八段(30)に勝利し、プレーオフが決まる。藤井は主催社を通じて「最終局の段階でプレーオフの可能性も高い状況でした。プレーオフもすぐ来週にあり、大きな一局になると思うのでしっかり集中して臨みたい」とコメントした。7勝2敗の最終成績については「負けた2局は両方完敗だったので仕方がない。7勝2敗の成績自体、それ以上は難しいというところだと思います。なので、結果的にプレーオフまで進むことができたので頑張りたい」と控えめだった。今季の順位戦で藤井が敗れた相手は、菅井八段と永瀬拓矢王座(30)である。

 一方の広瀬は「挑戦の可能性が残ったことはよかった。『この一番に勝てば名人挑戦』という一番は初めてなので、非常に重みのあるタイトル挑戦にできれば」と語った。

 広瀬は早稲田大学在学中の2011年に王位を獲得、18年には羽生善治九段(52)から竜王を奪った経験があり、失冠後も昨年12月に藤井竜王に挑戦するなど好調だ(藤井が4勝2敗で防衛)。

 実は今季の順位戦で広瀬と藤井が喫した各2敗の計4敗は、両者ともすべて後手番だった。藤井はこの日の勝利で、なんと「先手28連勝」(その後、3月5日の第48期棋王戦五番勝負の第3局で連勝ストップした)。

 終局後の会見で筆者が広瀬に先手・後手についての心づもりを問うと、「棋士はみんな先手が有利と思って戦いますが、後手番は公平に回るので……。ただ、藤井さんは二十何連勝もしているので、後手番となった時、(事前の)研究がメインになるかと思います」と話してくれた。

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