ガーシー議員が電撃帰国へ 「逮捕逃れ」のためのウルトラCと「逃げ切り阻止」をはかる当局との頭脳戦

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帰国して陳謝に応じる構えを

 国会への欠席が続いて「公開議場での陳謝」の懲罰が決定したNHK党のガーシー参議院議員がこれに応じる意向を示した。ドバイに滞在したまま帰国せず、3月上旬に想定されている「陳謝」を拒否した場合、更に重い「除名」処分を受ける見込みであることから、ガーシー議員は帰国して陳謝に応じる構えを見せていたが、今回の表明はサプライズと言えるだろう。NHK党の浜田聡参議院議員はガーシー議員が帰国しないのは「国家権力により不当な拘束を受ける危険性を排除できない」からだという弁明を代読していたが……。当局によるガーシー議員の「拘束=逮捕」シナリオとその回避をめぐる頭脳戦の中身についてレポートする。

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 ガーシー議員は、動画投稿サイトで俳優の綾野剛や三木谷浩史・楽天会長兼社長を誹謗中傷、脅迫したとして刑事告訴されており、警視庁は1月11日、暴力行為等処罰法の常習的脅迫や刑法の名誉毀損容疑で関係先を家宅捜索している。

 しかし、ガーシー議員は現職の国会議員であり、「不逮捕特権」が保障されている。彼が帰国しない場合、どうなっていたのか。国会手続きに詳しい政治学者に聞いた。

逮捕許諾請求への過程

「不逮捕特権とは、国会の会期中であれば、『現行犯逮捕』と『逮捕許諾請求』が認められた場合を除いて、国会議員は逮捕されないという特権で、憲法によって保障されています。国会開会中に国会議員を逮捕するには、現行犯逮捕(戦後3例が存在)の場合を除いて、『逮捕許諾請求』という手続きを踏む必要があります」

 逮捕許諾請求とは、具体的にはどういう手続きなのか。

「まず検察官または司法警察員(警部以上の警察官等)が管轄の裁判所に『逮捕状』を請求し、裁判官が『逮捕状を発布することが相当』だと判断した場合、内閣に『逮捕許諾要求書』を提出することになります。

 内閣は『要求書』を受理した後、閣議決定を経て速やかに、要求書の写しを添えて、所管の衆参議長に『逮捕許諾請求書』を提出します。議長はこの件を議院運営委員会に付託し、議運での審議の後に裁決結果が本会議に報告され、出席議員の半数以上の賛成多数で逮捕許諾が可決されます。その上で逮捕状が発布され、執行されることになります」(同)

捜査の手の内を明かすことに

 現職の国会議員を会期中に逮捕するには、これだけ複雑な手続きが要求されるのだ。それは、厳正な三権分立を維持しようとするからだが、政権与党が少数野党議員の身柄を拘束して国会審議を封じようとするといった「政治的動機に基づく逮捕権の濫用」を防ぐための手続きでもある。

 では、ガーシー議員に対する逮捕許諾請求はありえたのか。

「戦後に逮捕許諾請求が認められたのは16件ありますが、最近では2003年3月に、政治資金規正法違反で捜査中だった坂井隆憲衆議院議員に対して許諾請求が認められたのが最後です。その後、今に至るまでの20年間、許諾請求は一回も行われていません。

 逮捕を許諾するかどうかを議論する議運の審議は非公開の『秘密会』になることが多いですが、そうだとしても、捜査当局はどうしても犯罪の具体的な事実を答弁しなければならないので、捜査の手の内を明かすことになります。また事案によってですが、特に東京地検特捜部が手がける案件の場合は、国会審議に大きな影響を与える可能性もあります。

 そうしたことから、近年の捜査当局は逮捕許諾請求には抑制的です。実際に、2020年6月に河井克行前法相・衆議院議員と妻の河井案里参議院議員が公職選挙法違反(買収)で逮捕された際、東京地検特捜部はわざわざ通常国会が終わるのを待って、閉会翌日に逮捕したのです」(同)

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