金正恩の後継者に次女・ジュエはあり得ない理由 ならば娘をわざわざ登場させる意図はどこに?

国際 韓国・北朝鮮

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 北朝鮮国民は食糧難にあえぎ、大都市の開城市でも毎日数十名の餓死者が出ている、と韓国の通信社が報じた。この報道は、韓国の情報機関がリークした情報だろうから、信用できないとの反論もあった。調べてみた。結論は、間違いないようだ。

 北朝鮮についての報道の真偽は、どのように調べるのか。まずは、北朝鮮の対応や公式反応からわかる。韓国での否定的な報道に、北朝鮮はすぐに激しく反発するのに、なぜか今回はない。まず、韓国の報道は本当らしい、と判断できる。2月末の労働党中央委総会で、農業生産の目標達成や数字が明らかにされなかった。やはり、食糧事情は悪いと判断できる。

 韓国政府の発表では、昨年の北朝鮮の穀物生産は、大幅な減収だった。三度の大型台風による大規模水害が、確認された。穀倉地帯では、旱魃もひどかった。

 日本経済新聞は、2月16日に北朝鮮と中国との「2年ぶりの車両輸送の再開」を報じた。中国から食糧や生活物資を入れるためだ。まだ不定期だが、ひどい食糧難のため再開せざるを得なくなったという。北朝鮮は、社会主義国なのに食糧配給制をかなり前にやめた。社会主義は、党と政府が食糧や住宅、職場を供給し生活を保障するが、北朝鮮はこの制度をやめたから、国民は生きるためにヤミ商売や盗みを働かざるを得ない。

 日経は、北朝鮮の食糧事情について環日本海研究所研究員の「食糧、日用品の物資不足は深刻」との判断を掲載した。北朝鮮に友好的と言われる同研究所の発言だから、相当深刻だ。

 北朝鮮は、今年に入り金正恩総書記の次女ジュエ氏を盛んに登場させ、映像で紹介している。これも、食糧難や餓死問題から、国民の目を逸らすためと考えうる。

イメチェン作戦

 日本では、在日コメンテーターや学者が「次期後継者」と語っていたが、トンデモない分析だ。在日専門家や日本にいる韓国人学者は、北朝鮮に好意的な人物もおり、不利な発言を避ける。独裁や拉致問題、政治犯収容所、飢餓などに言及しない。

 北朝鮮は、国内の不満を収めるために、指導者家族を登場させ、指導者は家族に優しく、国民を思う温かい人物だとのイメチェン作戦を展開した。北朝鮮は、工作国家である。娘の登場も、宣伝工作のためである。つまり、華麗な映像の裏には、大きな国内問題があると分析できないと、専門家ではない。

 北朝鮮は儒教的社会主義国だから、女性は指導者にはなれない。なれないから、姿を見せた。金日成も金正恩も、後継者が決まるまでは、息子や娘を国民に見せなかった。もし顔や姿を出せば、韓国の工作機関が誘拐・暗殺するかもしれない。あるいは、国内でも暗殺されるかも。

 また息子や娘が姿をさらすと、高官たちが、指導者に食い込むために家族に接近する。これは韓国でも同じ儒教文化ゆえだ。大統領に「お願い」をする高官や企業人は、息子・娘に接触して「請託」をする。多額の資金が支払われる。

 北朝鮮でも同じで、自分の出世や生き残りを頼む。指導者の意向も探る。北朝鮮の指導者は、それがいやだから、家族を公開しなかった。これが北朝鮮指導者の考え方である。その北朝鮮の事情も知らずに「後継者」というのは、文字通りのシロウトだ。

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