【奥多摩バラバラ殺人】被害者は頭から爪先までガムテープでグルグル巻きにされ暴行、正座させられた…法廷で明かされた残忍すぎる手口

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路上に捨てられた「右腕」から事件が発覚

 いま東京地裁で、20年前に発生した凶悪事件の裁判員裁判が行われている。被告人は事件発覚直後から南アフリカに逃亡していた紙谷惣(48)。実に、17年に及ぶ海外逃亡を続けたこの男が逮捕されるに至ったきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大だった。

「コロナで仕事も金もなくなった。日本に帰りたい」

 紙谷被告が日本大使館に駆け込み、帰国を希望したのは2020年のこと。逃亡先の南アフリカでは当時、新型コロナウイルスの感染者が累計63万人と世界で7番目に多く、死者も1万4000人を超えていた。紙谷被告は出頭時に「殺人事件をやりました」と話していたという。しかし、現在行われている裁判員裁判では、その証言を翻し、「電話に出るためその場を離れ、戻ってきたら被害者が殺されていた」と、殺人について否認し続けている。ともに逃亡していた主犯格の男・松井知行は、2016年12月に南アフリカで自殺を遂げていた。(前後編のうち「前編」)【高橋ユキ/ノンフィクションライター】

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 捜査の手を逃れ、遠くアフリカ大陸まで高飛びした男は、一体どんな犯行に手を染めていたのか――。紙谷被告らが引き起こした事件は、バラバラに解体された被害者の遺体が発見されたことによって発覚する。

 殺人犯が被害者の遺体を損壊し遺棄する目的は、多くがその犯行を隠匿し、発覚を遅らせるためである。しかし、東京・奥多摩町の路上で切断された“右腕”が見つかったのは2003年10月4日。事件から1ヶ月も経っていなかった。

 手の甲を上にして、ひじを直角に曲げた状態で山側の道沿いに落ちていたその右腕は、ほどなく飲食店勤務の古川(こがわ)信也さん(当時26)のものであると判明する。警視庁は死体損壊・遺棄事件と断定し捜査を開始。翌年1月には、当時18歳~30歳の男女6人が殺人容疑などで逮捕され、うち数人が取り調べに「殺害して遺体を切断し、山中に捨てた」と供述した。こうした証言をもとに捜索が行われた結果、古川さんの頭部が発見される。当時逮捕された6人のうち5人が有罪となり、1人が少年院に送致されている。

 一方、紙谷被告は、古川さんの右腕が発見されたことが報じられるや否や、主犯の松井らとともに日本を出国。アメリカを経由して南アフリカに辿り着き、長きにわたる潜伏生活を続けた。だが、刑事訴訟法によれば「犯人が国外にいる場合」は“時効”が停止する。そのため、帰国後の紙谷被告は殺人、監禁、死体損壊・遺棄というすべての罪で起訴されることとなった。

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