サミットで毎回“ぼっち”になる日本の首相たち 今回ホストで岸田総理はホッとしている?(中川淳一郎)

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 5月に広島でG7サミットが開催されますが、岸田文雄首相はホッとしていることでしょう。というのも、日本開催は7年に1回であり、自分の首相時代にそのホスト役ができるのです。そして何にホッとしているのか……「疎外感を味わわないで済む」です。

 何しろ毎度サミットの映像を見るとこちらは恥ずかしくなってしまいます。日本の首相は白人首脳が談笑している中、蚊帳の外で「ぼっち」状態も見られる。記念撮影をする場合、慣例として中央にホスト国の首脳がいてその両隣から、在任期間の長い順に並んでゆき、短いほど外側に行く。EU首脳は常に端っこです。日本の首相はコロコロと代わるものですから、中央にはなかなか行けない。背も小さく存在感がない。

 2017年、トランプ米大統領はイタリアで行われたサミットで堂々とイタリアの首相の脇に割り込んで写真を撮る。さらに、1983年、アメリカで行われたサミットでは就任1年目の中曽根康弘氏が中央に割って入りレーガン氏の隣に行ったなんてこともあった。

 以来サミットを見ていますが、恥ずかしくなかったのは小泉純一郎氏と安倍晋三氏。二人ともズケズケと各国首脳と喋り、在任期間も長いから各国の新しい首脳に対して「ワシはベテランだかんな!」という空気を醸し出していました。そして、五輪にも出場した経験を持つ麻生太郎氏。2009年のサミットではサルコジ仏大統領とメドベージェフ露大統領にファッションを自慢しているのか満面の笑みを浮かべ、二人が麻生氏のカフスかバッジをのぞき込む写真が話題となりました。

 寂しそうな点で印象に残っているのが菅直人氏。各国首脳が輪になって談笑している外から愛想笑いを浮かべている映像を思い出します。菅義偉氏も、コミュニケーション上手でないため、2021年のサミットでは寂しそうでした。

 ラッキーだったのが2008年、洞爺湖サミットのホストを務めた福田康夫氏では。鉄面皮の官房長官的イメージがあったので、にこやかな交流ができるのか……と心配していたのですが、ホストだったため、そこそこ存在感は示せていました。そういった意味で、広島が地元の岸田氏はもみじ饅頭やら宮島、穴子、お好み焼きの話などをして和気あいあいとした雰囲気はつくれそうですし、原爆に関しては実態をわかってもらえ、昨年のサミットでの緊張した様子とは異なる姿を見せられるのでは。

 人間、「やることがある」「役割が与えられる」とホッとしますよね。イベントやら送別会等の立食パーティーで、私は受付をやるのが好きです。何しろ、一人ぼっちでビール瓶とグラスを持ってキョロキョロする事態を回避できるから。「私は写真が趣味です」なんていう人がひたすら一眼レフカメラで現場の様子を撮影しているのも同様でしょう。

 そんなサミット、一つ注目しているのが各国首脳と随行員が素顔なのに、日本のスタッフや沿道の人々が全員マスクをし続けているか否か。「なぜ彼らはマスクをしているのだ」と岸田氏が聞かれたら「我々の周囲には陰陽師による結界がある」と日本的ジョークを飛ばしてほしいものです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年2月9日号掲載

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