ドラマ「Get Ready!」にホリプロの主役級が総動員されている理由は? 荒唐無稽ながらワクワクの「SF風味作品」

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 悪いことをやっていそうな富裕層で、余命宣告されたり、治療不可と大学病院に断られた人間に、法外な金額を提示。最先端医療と高度な技術で命を確実に救うという、神出鬼没の闇医者「仮面ドクターズ」が暗躍。ま、荒唐無稽な医療ドラマなのだが、あの手術室がちょっとワクワク。子供の頃に観ていた「ナイトライダー」を思い出しちゃった。あれがもう夢じゃない世界になりつつある令和。

 そうそう、今期のドラマはなぜか「もしも系」というかSF作品が多い。幽霊やタイムリープ、男女逆転に妊娠する男、忍者、ネズミが人間になりすましたり、犬に転生とかもある。なんだろうね、現実逃避したいのかな、テレビ局の人が。あまりに現実が世知辛すぎて。あるいは想像力と表現が無限大のアニメに負けじと、SFに挑んだのかな。

 さて、SF作品が多い中で、技術的には最も現実味のある世界を描いているのが、妻夫木聡主演の「Get Ready!」である。

 久しぶりの妻夫木主演作だが、藤原竜也も傍らにいて、無口で孤高な役どころの妻夫木よりもむしろ主役に近いキャラ造形。しかも、初回ゲストが池松壮亮で、鈴木亮平までもが謎の運び屋役?! 主演級の俳優たちを一作品にぎゅっと集めた背景には何があるのか。天才ハッカー役の日向亘(ひゅうがわたる)も含めて、ホリプロ総動員ではないか。つうか豪華じゃん。

 私が考えた背景その1。ジャニーズ主演作が異様に増えて、本来ホリプロだった枠が奪われてしまった? その2。テレビ局がドラマのターゲットを若者に絞った結果、手練れの30~40代役者よりも20代役者やアイドルを使うようになった?

 地殻変動だと思う。腕のある役者がわんさかいたら、見せ場が減るし、1話ゲストじゃ物足りなさを感じちゃう。豪華メンバーの競演を素直に楽しめばいいのだが、「なんかバランスおかしくない?」と思ってしまう。ま、そんなことはどうでもいいから、「Get Ready!」の話をしよう。

 妻夫木はすご腕執刀医、藤原は交渉人で国際弁護士、オペナースは松下奈緒(この松下、めっちゃ適役。これくらいアクの強い役のほうがしっくり)、ハッカー日向で4人組。少数精鋭。妻夫木の信条は「命を救う価値がある人間だけオペを引き受ける」。大金をふんだくって命を助けるのは富裕層だけかと思いきや……。

 3話で毛色の異なる依頼人が。杉本哲太は愛娘を残忍な手口で殺された父親役。犯人は3人の若者(西山潤・小野寺晃良・若林時英)。彼らは1ミリも反省などしていない。余命宣告された哲太は家を売って3千万円用意し、3人に復讐するための延命を仮面ドクターズに依頼。哲太の悔しさと覚悟にもらい泣きしちゃってね。1話の池松(支払い総額100億円)、2話の柄本明(10億円)も名演だったけれど、哲太の思いをくんだ妻夫木が粋なはからいを用意。3話でぎゅっと心つかまれた。

 仮面ドクターズを追う警察の面々と、謎のウサギ占い師(三石琴乃)に、堤幸彦演出独特のクセとえぐみも。日曜劇場の新種を愛でる。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2022年2月9日号掲載

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