「刑務所が無料の老人ホーム化」「刑務官は廃墟のような家に…」 杉良太郎が64年間、刑務所改革に取り組み続ける理由

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刑務官は6畳と4畳半の2間で子どもを育てている

 官舎というと「公務員住宅だから、さぞ良いところに住んでいるんだろう」といったイメージが強いと思います。赤坂や青山の国会議員宿舎などの印象があるからでしょうが、とくに地方にある国家公務員宿舎の多くは、想像以上に老朽化が進んでいるのが現状です。

 施設課長が「居住環境を改善しないと職員が居着かない」と訴えてきたことがあります。そこで実際に足を運び、「どうしていままでこの事実を誰も口にしなかったのか?」と、気付けなかった自分にもがくぜんとしたことがあります。

 視察に行く前に、法務省の職員に「間取りは幾つ?」と聞いたら「二間あります」という。私は「8畳と6畳の二間かな」と想像しましたが、実際には6畳と4畳半でした。いまどき4畳半なんて一間に含まれるのかと驚きましてね。受刑者には三食が付き、夜中でもガードマンが見回ってくれるから安心で安全な住環境にある。一方で、彼らを監督する刑務官は6畳と4畳半、そして台所という狭い部屋で、子どもを育てていることが分かった。

 すぐに全国の官舎の写真を取り寄せ、それを超党派の再犯防止議員連盟のメンバーたちに見ていただいた。それで「近いうちに川越少年刑務所に行きます。みなさんも一緒に来て下さい」とお誘いしました。

「これ、廃墟じゃないですか」

 実際に現地を視察した後で、議員の方たちに「みなさんはここに住めますか?」と聞くと、全員が「住めません」と口をそろえた。中には「これ、廃墟じゃないですか」と驚く議員までいたほどです。そこで私は「ご自分が住めないところに、職員に住めと言うのはいかがなものでしょう」と窘(たしな)めるように続けた。率直な印象として「ひどいな、こんな住宅がまだあるのか」というほど老朽化が進んでいたので、いまも少しずつ住宅の建て替えやリフォームを進めているところです。

 警察官とは違って、刑務所の職員にはなかなか陽が当たらない。子どもに「お父さんは何の仕事?」と聞かれて「刑務官だよ、とは言いにくい」と話す職員はいまも少なくありません。「自分の子どもに胸を張れない」というのです。だから私は全国の施設を回って「プライドを持て」と、指導したり勇気づけたりしてきたのです。

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