乱れた腸内細菌がお風呂で家族に伝播! 健康長寿につながるビフィズス菌の摂取、活用法

ドクター新潮 ライフ

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何と一緒に取ればいい?

 摂取した弊社のビフィズス菌は、腸内まで生きて届くことが証明されていますが、腸内細菌を安定化する作用もありそうです。

 例えば、肉と卵ばかり5日間食べる試験を実施すると、大腸がんとの関連が報告される腸内細菌種が増え、ビフィズス菌が減ることが分かりました。それに対し、ビフィズス菌入りヨーグルトを一緒に食べると、ビフィズス菌は減らず、大腸がんに関係する細菌は増えませんでした。

 また、花粉症患者の方はシーズン中に腸内細菌のバランスが変わってしまうのですが、ビフィズス菌を摂取すると、その変動を抑えられることも分かりました。

 ビフィズス菌は酢酸を作り、さらにその酢酸をエサにして、酪酸を作る腸内細菌が多く増えることも報告されています。

 これらの研究は、日常的なビフィズス菌の摂取が、健康な状態を維持するのに役立つことを示していると考えています。

 しかし、食べたビフィズス菌は便と一緒に排出されてしまう。ですので、ビフィズス菌は毎日摂取することが大事なのです。「ビフィズス菌はバナナやキウイと一緒に食べるといい」といわれます。水溶性食物繊維の多い食べ物は腸内に届きやすく、一緒に取れば有効に作用します。逆に、ビフィズス菌は酸に対して強くないため、オレンジジュースやレモンなどと一緒に取ると生きたまま大腸まで到達する率が下がってしまいます。

 さらに、朝起きた時は胃が空っぽで胃酸を多く分泌するため、ビフィズス菌が生きたまま腸に届きにくくなります。効果を高めるためには、朝食を食べた後に摂取するほうが望ましい。摂取は、朝でも夜でも効果は大きく変わりませんが、習慣化するためには朝食後がいいでしょう。また、過度な飲酒も腸内環境を悪化させる恐れがあります。

 高齢者は、腸内細菌を若い時のまま維持するという意識が大事です。そのためには、食物繊維の多い食べ物を幅広く取ることも、適度に運動することも、ビフィズス菌が含まれるヨーグルトを毎日食べることも大切です。

どの程度取ればいいのか

 では、どの程度ビフィズス菌を取ればいいかといえば、その答えは難しい。腸内細菌は個人差があり、ビフィズス菌との相性もあるためですが、一つの指標は、毎日の便を見ることです。

 腸内細菌のバランスが便に与える影響は小さくありません。普段と違って便の臭いが強いとか、コロコロの便や軟便が出るなど形状が違う場合、腸内細菌のバランスが変化している可能性があります。毎日の便の状況が良い、という感覚を持てる量を取ることをお勧めします。

小田巻俊孝(おだまきとしたか)
森永乳業研究本部 基礎研究所腸内フローラ研究室長、農学博士。1999年東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了、森永乳業入社。ビフィズス菌など腸内細菌の基礎・応用研究に従事している。外部研究機関との共同研究を推進し、理化学研究所やコーク大学に研究員としても参画。腸内細菌学会をはじめ複数の学会から受賞歴あり。

週刊新潮 2023年1月5・12日号掲載

特別読物「『寿命』を左右! 高齢でも多い人ほど長寿 『ビフィズス菌』の正しい摂取・活用法」より

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