乱れた腸内細菌がお風呂で家族に伝播! 健康長寿につながるビフィズス菌の摂取、活用法

ドクター新潮 ライフ

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食事のワンパターン化

 そこで今は、特定の細菌だけを増やすよりも、腸内細菌全体が安定的で、バランスが変わらないことがより大事だと考えられるようになりました。

 バランスを崩す要因はいろいろありますが、日本のトップアスリートを対象として1年間続けた研究で、腸内細菌の変化が大きかったのは、「感染症を患い抗生物質を服用している時」や「海外での生活を始めた時」でした。時差によって人の生活リズムが乱れると、腸内細菌のバランスも変わることが明らかにされています。

 また、食生活も大きく影響すると考えられます。いろいろなものをバランスよく食べず、食生活が単純化したり、偏ったりすると、特定の食材をエサにする細菌だけが増えて腸内のバランスが崩れるのです。これは私見ですが、加齢により腸内細菌が変化するのは、高齢になると食事がワンパターン化してしまうこともひとつの要因になっているのではと考えています。

薬の服用が影響

 さらに、2022年7月に発表された最新研究では、さまざまな薬の服用が腸内細菌に大きく影響することが分かりました。

 東京医科大、早大、国立国際医療研究センターなどによる、日本人約4200人を対象とした大変価値のある研究です。

 それによれば、腸内細菌のバランスに影響するのは一番が薬剤で、以下、疾患、身体測定因子(年齢・性別・BMI)、食習慣、生活習慣、運動習慣の順となります。

 薬剤では、消化器疾患治療薬(胃薬など)、糖尿病薬、抗生物質の順で影響が大きいことも分かりました。

 消化器疾患治療薬の影響が大きいのは、胃酸の分泌を抑えるために、本来なら胃までしか到達できない外部からの菌が大腸に届いてしまうためです。糖尿病薬は糖の吸収を抑制するために過剰な糖が大腸まで届いてしまい、それがエサとなって通常と異なる腸内細菌がより多く増殖してしまう可能性があるのだと考えられます。

 抗生物質を服用すると、病原菌とともにビフィズス菌を含む腸内の多くの菌も殺されてしまいます。先のアスリートの例では感染症にかかった際に、抗生物質を服用し、腸内細菌が大きく乱れました。もし、抗生物質に耐性のある菌が腸内にすんでいたりすれば、服用後に悪い菌が幅を利かせる状態が続く可能性もあります。多くの場合、薬の服用を終えれば腸内細菌のバランスは元に戻るようですが、更なる研究は必要だと思います。

 体調を整えるのに必要な薬でも、むやみに摂取すると腸内の健康に影響を与える可能性があるのです。

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