職場の派遣女子に熱を上げたら「地獄でしたね」 42歳不倫夫が1日で味わった“2つの修羅場”

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そして修羅場が…

 ついには「警察呼びますか」という近所の声まで聞こえてきたので、優也さんは意を決してドアを開けた。美希子さんはまっすぐに彼を見た。その目に言いようのない怒りと悲しみをたたえているのが彼にはわかった。だがどうしようもなかった。

「美希子は僕の脇をすり抜けて絵梨に向かってグーパンチを繰り出したんです。絵梨は吹っ飛ぶようにうずくまった。鼻血が噴きだしたので、思わず何をするんだと妻を平手打ちしてしまいました。妻は『あんたもその女もぶっ殺してやる』とドスのきいた声で言うと、ドアを開けて出て行った。近所の人が救急車と警察に連絡したらしい。僕は絵梨につきそって救急車に乗り、病院に行きました」

 絵梨さんのケガはたいしたことはなかったが、精神的なショックが大きく動揺も激しかったため、その日は入院することになった。優也さんは警察で事情を聞かれ、深夜、やっと解放された。そのとたん、今度は美希子さんのことが心配になって自宅に戻った。

「リビングが真っ暗だったので電気をつけると、美希子はひとり、ソファに座っていました。振り返って僕を見つめると、『お帰り。何か食べる?』と。さっきのことがなかったかのように振る舞おうとしている。『ごめん』とつぶやくと、『信頼していたのに。何があっても、いつか戻ってきてくれると思ってたのに。給料が減ったとか嘘までついて』と苦しそうに言うんです。絵梨に向かって拳を振り上げた妻と同じ人物とは思えないほど、意気消沈していました。僕は、『ごめん』としか言えなかった」

 それでもどこか現実感がなかった気がすると、彼は当時を振り返る。恋に浮かされて、どこか頭のネジが緩んでいたんだと思うとも言った。

 優也さんが黙って突っ立っていると、美希子さんが「ねえ、出て行ってくれないかな。もう無理だから」と虚ろな目を向けた。

「わかったと言うしかない。身の回りのものをキャリーバッグに詰めて玄関を出ようとしたら、離婚届を手渡されました。もうすでに妻は用意していたんですね、サインもしてありました。それを見たら僕はひどく動揺してしまった。『離婚はしないからな』と叫んで離婚届をビリビリに破いて家を出ました」

絵梨さんの部屋の前に立っていたのは――もうひとつの修羅場

 行くところは絵梨さんの自宅しかない。絵梨さんの部屋にたどり着くと、優也さんと同世代の男性がドアの前に立っていた。

「ここ、絵梨の家ですよねと彼は言いました。そうですけどと答えると『あなたは?』と。そう言うあなたはと問うと、『絵梨の婚約者です』って。なんと、絵梨には遠距離恋愛をしている恋人がいたんです。絵梨とは高校の先輩後輩で、つきあって7年になる。ここ2年、彼は海外にいて、今日帰ってきたところだと。空港に迎えに来てくれるはずの絵梨が、熱を出して寝ているというので心配になって来てみた、と言うんです。あなたは誰なんだと聞かれて、思わず『いとこなんです。僕も海外から帰ってきたばかりで、家が遠いので絵梨のところに泊めてもらおうと思って来たところ』と答えました。彼女はどこに行ったんだと言われて、僕もわからない、鍵は玄関脇のメーターボックスに入れておくから使っていいと言われたと、もうはちゃめちゃな言い訳をしました」

 彼は絵梨さんの携帯に連絡をとろうとしているようだったが、彼女の携帯の電源は切って、絵梨さんの病室の枕元に置いてきたから連絡はとれない。だがそれを優也さんが彼に言うわけにはいかなかった。

「彼は明らかに疑っているようでしたが、車で来ているのでとにかくいったん帰りますと去っていきました。とりあえず近場のホテルに泊まって、これからどうしようと考えているうちに、疲れて寝込んでしまった。目が覚めると朝でした。会社に行くしかなかった。人間ってどういうときでもふだんと同じような動きをしてしまうんですね」

 昼頃、絵梨さんから退院して自宅にいると連絡があった。定時で上がって部屋に行こうとすると、絵梨さんから『今日はひとりでゆっくりしたい』とメッセージが届いた。あの男と一緒にいるに違いないと、優也さんは頭に血が上ったという。

「絵梨の部屋に、今度は僕が突入しました。案の定、彼と一緒だった。彼が驚いているのを横目に、僕は『絵梨とつきあっている。手を引いてほしい』と言いました。『あなた、既婚者じゃないんですか』と言われ、『既婚だろうが何だろうが、オレは絵梨とは別れない。絵梨のことが好きなんだ』と叫びました。そしてそのまま部屋を飛び出し、今度は自宅に戻って、美希子に『離婚したくない』と泣いてすがった。もはや自分でも何をしているのかわかりませんでした」

 美希子さんは悲しげに首を振り、「もう無理よ」とだけ言ったという。それでも優也さんは、その後も絵梨さんと美希子さんの間を行ったり来たりしていた。

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