「カスハラ」の7割以上が男性だった!50代以上で顕著に 昭和・平成の“金銭要求系”のクレーマーとの一番の違いは?

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“言い訳がましい謝罪”を繰り返した理由

 コロナ禍の最中、多くの飲食チェーンを展開する某外食企業から、「悪質なカスハラ」の相談があった。ある中年の男性客が、アルバイト店員の接客態度が気に食わなかったようで大激怒、店長を呼び出して延々と説教をした挙げ句、会社としてこの問題をどう捉えているか説明せよと迫ってきた。それを自身が開設しているYouTubeチャンネルで「公表」するというのだ。あまりに理不尽な要求に、この会社としては法的措置も視野に入れた対応を検討していた。

 だが、筆者はそのような方向性をやめて、まずはこの男性に店長がしっかりと謝罪すべきだと進言した。というのも、実は店長から経緯を詳しくヒアリングしたところ、この男性に「お客様が不快に思われたのならば申し訳ありません」という“言い訳がましい謝罪”を繰り返していたことがわかったからだ。

 なぜこんな言い方をしたのかと店長に理由を尋ねてみると、以前受講したクレーマー対策のセミナーで講師から「理不尽な要求に対して安易に謝ってはいけません」と言われたからだという。担当したアルバイトに聞いても接客は問題なかったので、「店を守る」ために「非」を認めなかったのだ。

「あなた様が全面的に正しい」の一言が欲しい

 実はここに、件のカスハラがここまで深刻になった原因がある。NHKがカスハラを扱う番組の中で取材をした「元クレーマー」だという50代男性はこう述べている。

「持ち上げられながら『すみませんでした』と言われることで、自分のクレームの正当性が認められたと感じるんです。なにぶん正義を振りかざしているので、『自分の言ってることは間違いじゃなかったんだ。正義だったんだ』と認められると、自分で満足するわけですよ」(『カスハラ モンスター化する「お客様」たち』文藝春秋)

 つまり、カスハラをする人というのは「大変申し訳ありません、あなた様が全面的に正しいです」という一言が欲しくて、店員に暴言を吐いたり説教したりしているのだ。そこで店員側も自分を「正義」だと思って突っぱねて、明確な謝罪を避けてしまうと、客側は振り上げた拳をおろす場所がないので、「謝罪」を引き出すために、暴力やSNSでの誹謗中傷などさらなる過激な行動をとる。筆者が、企業や役所から相談を受ける「深刻なカスハラ事案」は、かなりこのパターンが多い。裏を返せば、深刻な事態に至らないためには「逆」をやればいいのだ。暴言や説教を受けたら即座にシンプルな謝罪をする。理不尽な言いがかりだと思っても、とりあえず頭を下げておくのだ。

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