「名古屋刑務所」暴行事件 発覚50日前に“スクープ”したYouTube動画と「地獄のメイケイ」刑務官“暴力性”の特殊事情

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消防用ホースによる“直腸噴射”死亡事件

 刑務官らは事実関係をおおむね認め、暴行の理由について「(受刑者らが)指示に従わず、大声を出すなどしたため」と話しているという。一方で、小川氏は「配信当時、名古屋刑務所が隠蔽を図ろうとしているとの話も聞いていた」と語る。

 実は今年3月、刑務所の運営をチェックするため弁護士など民間人で構成される刑事施設視察委員会が「(名古屋刑務所内の)受刑者から複数の職員に対して不満が出ている」と指摘。しかし名古屋刑務所は「職員の不当な言動や対応はなかった」と回答していた。

 名古屋刑務所の職員数は447人(今年11月時点)で、受刑者と接する処遇部門には約260人が所属。収容定員2427人に対し、約1230人の受刑者が収容されているという。

 刑務所としては府中、大阪に次ぐ規模を誇るが、“悪名”の高さでは両刑務所にまさる存在だった。2001年、副看守長(当時)らが消防用ホースを使って受刑者の肛門に放水し、直腸などに裂傷を負った受刑者が細菌性ショックで死亡する事件が発生。翌02年にも刑務官らが受刑者の腹部を革手錠付きのベルトで締め付け、外傷性ショックで死亡させる事件が起きた。両事件では計8人の刑務官が特別公務員暴行陵虐致死罪などで逮捕・起訴され、無罪となった1人を除き、7人に有罪判決が下された。

受刑者の多くは「再犯短期」

 事件の背景について、小川氏はこう話す。

「名古屋刑務所は“窃盗で5~6年の刑期”を科された者など、いわゆる“再犯短期”の受刑者が多くを占めます。重罪の長期刑を受けた者や初犯の受刑者などは刑務官に反抗することもあるが、再犯短期組は来たる出所に備えて刑務官の言うことに素直に従う従順さが特徴のひとつとして挙げられます」

 法務省関係者が補足する。

「刑務官という職業は、20代の若造でも受刑者から“先生”や“オヤジ”などと呼ばれ、持ち上げられるケースが珍しくない。現実に懲罰を与える権限も有しているため自制心が重要視されるが、“メイケイ”のように受刑者が大人しい刑務所ではタガが外れがちになる傾向があるのは否定しない。また施設敷地内で生活をしている刑務官も少なくなく、閉ざされた空間で受刑者と同僚など同じメンツとばかり交流することで、常識的な感覚が麻痺してしまうことを懸念する指摘は以前からあった」

“地獄の名刑”の悪しき文化は「今なお、残っている」と指摘されても反論はできないだろう。

デイリー新潮編集部

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