なぜ金正恩の娘が登場したのか 「平壌はウワサの街」でやむにやまれぬ事情も

国際 韓国・北朝鮮

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 北朝鮮は金正恩総書記の娘の写真を、11月19日に初めて公開した。韓国の報道によると、子供は2010年生まれと2013年、2017年生まれの3人という。写真の娘は、9歳の長女ようだ。北朝鮮に拉致された横田めぐみさんは13歳だったから、娘を思う親の気持ちは、指導者にもわかるはずだ。

 なぜ娘の写真を公表したのか。結論から言うと(1)金正恩の健康不安説の打ち消し(2)戦争への国民の不安解消(3)米国の「斬首作戦」(金正恩テロ)への対抗(4)中国への不満――と考えられる。

 テレビ局の放映で、ある大学教授は「(金一族)体制を永続させようとの意思表示」と解説したが、かなり根拠レスで疑問だ。体制継続を強調するなら長男を出せばいいので、娘と妻を出す意味はないから、体制永続とは関係ない。

 多くの専門家は、平壌は「噂が先行する街」という現実を、全く分かっていない。言論統制で「大本営発表的報道」しかない国では、ウワサが先行する。かつてのソウルやモスクワ、北京がそうだった。ウワサは、権力を揺さぶる。公式報道は、裏を考えるべきだ。

権力者の意図と裏がある

 国際政治の分析には、相手の国がどのような状況にあるのかの情報入手と、正確な分析が必要だ。まず、北朝鮮の報道をそのまま受け入れるのは危険だ。報道の自由のない国の公式報道であることを忘れてはならない。必ず権力者の意図と裏がある。

 北朝鮮では、指導者一族の写真や動画の公表は、当局の詳細なチェックを経た上で、金正恩の許可が出ないと公表できない。つまり、北朝鮮に不利な写真や表情は出せない。これを分かった上で、専門家はコメントすべきだ。

 北朝鮮には指導者の娘の写真を出す必要があったから、公式写真を公表した。日本のような報道写真ではない。報道の自由はない。全ては、やらせ写真だ。写真の裏に何があるのかを、考えないといけない。また、北朝鮮のミサイル発射は、発射のたびに毎回報道されてはいない事実に、注意すべきだ。

 北朝鮮は11月7日付けの労働新聞で、それまで報道しなかったミサイル発射を20枚以上の写真と共に一挙に掲載した。こうした報道で、国民の指導者の偉大さを示し、国民と軍の士気を高めようとしたのだろう。ところが、当局の思惑を超えて、平壌ではさまざまなウワサが流された。

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