水原希子も絶賛 老舗ラブホの名物「回転ベッド」を、女性カメラマンが自宅で“保存”する深い理由

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「大の大人がベッドのひとつ守れなくてどうする!」

 実は、具体的に搬送計画を詰めるうちに、「無理ではないか?」と弱気になった時期もあったという。

「費用、距離、重量、人員……。やはりそう簡単ではありませんでした。“できない理由”を探し始めた私に、ガツンと刺激を与えてくれたのが、テレビで見た信号機マニアの小学生です」

 2021年2月、小学5年生(当時)の男児が、コツコツ貯めたお金を元手に佐賀市の信号機オークションに参加。車両用と歩行者用、計3つの信号機を落札した。さらに独学でプログラミングを学び、自宅で信号機を点滅させることに成功。オークションから1年後にテレビ番組で取り上げられた。これを偶然見た那部さんは、

「すごい! 大の大人がベッドのひとつ守れなくてどうする! と気持ちが一気に高まりました。もうひとつ、水原希子さんとkemioさんが303号室で撮影した写真をインスタで見たのも背中を押していました。あの美しい希子さんが素足で乗った回転ベッドですよ。これも保存したい理由のひとつになりました」

「回転ベッドスタジオ」爆誕!

 シャトーすがもから運び出された303号室の回転ベッドは、輸送の苦労を乗り越えて無事に那部さんの家に設置された。那部さんはベッドに合わせて床と壁をリニューアル。今後は設置された部屋を撮影スタジオとしても使いたいという。

「昭和ラブホのファンは4年前に比べてかなり増えているのに、肝心のホテルはどんどん閉業しています。貴重な昭和遺産を守りながら、ここで昭和ラブホが好きな人の撮影会ができればと思います。いつか映画の撮影でも使って欲しい」

 自宅に昭和ラブホで使われていた回転ベッドを移設した女性は、おそらく日本で那部さん以外にいない。そしてシャトーすがもの回転ベッドが「保存第一号」だろう。

 日本で浮世絵が芸術として認識されるまで時間がかかったように、ラブホテルが「文化」として語られるようになるのは、もっと先の話かもしれない。那部さんの行動は、そんな未来に向けた布石のひとつになりそうだ。

華川富士也(かがわ・ふじや)
ライター、構成作家、フォトグラファー。1970年生まれ。昨年、長く勤めた新聞社を退社し1年間子育てに専念。今年からフリーで活動。アイドル、洋楽、邦楽、建築、旅、町ネタ、昭和ネタなどを得意とする。過去にはシリーズ累計200万部以上売れた大ヒット書籍に立ち上げから関わりライターも務めた。

デイリー新潮編集部

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