韓国を日米韓の軍事協力体制に引き込んだバイデン、直後に中国にすり寄った尹錫悦

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 J・バイデン(Joe Biden)大統領が首脳会談を機に、韓国を日米韓の軍事協力体制に引き込んだ。だが、直後に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は習近平主席に会い、米国の言う通りにはならないと約束した。迷走する隣国を韓国観察者の鈴置高史氏が読み解く。

米国側に押しやった「北の核」

鈴置:11月13日、カンボジアで開いた日米韓首脳会談。韓国で「画期」と評されました。米中等距離外交を続けてきた韓国が一転、米国が唱える中国包囲網に加わる姿勢を打ち出したからです。

 象徴的な動きは日米韓の3国軍事協力に踏み切ったことです。文在寅(ムン・ジェイン)政権は中国に恫喝され、米国が要求する3国軍事協力を拒否してきました。

 韓国の変化は保守の尹錫悦政権に代わったためでもありますが、本質は北朝鮮の核武装が現実のものとなったことにあります。

 保守系紙、東亜日報の社説「北朝鮮を庇護する中国、韓米日『3国安保』の標的を自ら招くだけだ」(11月14日、日本語版)は「画期」を謳いあげました。

・尹錫悦大統領とバイデン米大統領、岸田文雄首相は13日、カンボジア・プノンペンで、韓日、韓米、韓米日首脳会談を開き、北朝鮮の核・ミサイル脅威に対抗した3国の安全保障協力体制を強化することで合意した。また、韓米日の首脳らは、北朝鮮を庇護する中国に対して全方位の圧力が必要という意見で一致した。
・[3国軍事協力は]北東アジアの米軍のプレゼンスや兵器の配備・展開など軍事力をさらに強め、北朝鮮の核の脅威を越え、その背後勢力、中国の軍事力まで封鎖するという明確な警告だ。
・韓国政府も、中国に期待をかけることを止め、米国、日本の中国牽制共同戦線に徐々に合流するムードだ。
・北朝鮮の高強度の挑発は、中国との外交的緊張の懸念も韓日間の過去問題や韓米間の貿易差別問題も後方に追いやり、韓国の対米接近をもたらした。

習近平にクギ刺したバイデン

――北朝鮮の相次ぐミサイル演習と、迫る核実験が米国側に押しやった……。

鈴置:次の核実験は弾頭の小型化が目的と見る向きが多い。小型化――つまりミサイルに搭載可能になれば韓国は、そして日本も北の核の脅威に日常的にさらされるようになります。米国は日韓を同盟につなぎとめるためにも「北の核」に強い姿勢で臨んでいます。

 日米韓の首脳会談後に発表された共同声明「インド太平洋における三か国パートナーシップに関するプノンペン声明」(外務省仮訳)で、「首脳は、北朝鮮による核実験は、国際社会による力強い確固たる対応により対処されることを確認する」と北朝鮮に強い警告を送っています。

 翌11月14日、インドネシア・バリ島での米中首脳会談の席でも、バイデン大統領は習近平主席に対し強度の警告を発しました。バイデン大統領自身が会談後の会見で明らかにしています。

・I’ve made it clear to President Xi Jinping that I thought they had an obligation to attempt to make it clear to North Korea that they should not engage in long-range nuclear tests.
・And I made it clear as well that if they did — “they” meaning North Korea — that we would have to take certain actions that would be more defensive on our behalf, and it would not be directed against North Korea — I mean — excuse me — it would not be directed against China,

「長距離ミサイル・核の実験をすべきではない、と中国は北朝鮮に明確に伝える義務がある」と習主席にはっきりと伝達した、とバイデン大統領は語りました。

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