韓国を日米韓の軍事協力体制に引き込んだバイデン、直後に中国にすり寄った尹錫悦

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プノンペンで約束、バリで裏切り

 11月15日、バリ島で中韓首脳会談が開かれたのですが、ここでも韓国の腰砕けが明らかになりました。聯合ニュースの「尹大統領の東南アジア歴訪終了 キーワードは『韓国版インド太平洋戦略』」(11月15日、日本語版)という一連の外遊まとめ記事から引用します。

・今回の歴訪のキーワードとして「韓国版インド太平洋戦略」が挙げられる。これを通じて米国のインド太平洋戦略に歩調を合わせながら、習近平・中国国家主席との韓中首脳会談を通じて「対中けん制」にある程度距離を置く姿勢を示した。
・米中競争の最大の激戦地とされる東南アジアを舞台に独自の戦略[韓国版インド太平洋戦略]を公開したことも注目に値する。韓国は米国の対中政策の基調に全面的に同調するのではなく、ASEANを中心に独自の地域外交戦略を駆使するという意思を強調。そのため歴訪最終日に実現した韓中首脳会談にも関心が集まった。
・尹大統領は米国の対中けん制戦略に無条件に同調しないという意思を首脳会談で示したとみられる。

 最後のくだりからすると、韓国政府関係者が匿名を条件に聯合ニュースに対し「米国の対中牽制に無条件で同調しない、と大統領は習近平に伝えた」と語ったのでしょう。

――なぜ、韓国政府はそんなリークをしたのでしょうか?

鈴置:中国からの報復を恐れる声が保守陣営から高まっていたためと思います。もちろん、中国に「米国一辺倒ではありません」と恭順の意を示す狙いもあったのでしょう。聯合ニュースの記事は中国の外交関係者も良く読んでいます。

 聯合ニュースは中国語版でも、韓国大統領室の高官が「尹錫悦の外交政策は米国一辺倒ではない」と11月16日に語ったと報じています。「韓総統室:対華外交空間充足 非対米一辺倒」(11月16日)です。

見透かす米国、騙される日本

――そんな韓国を見て、米国は怒らないのですか。

鈴置:韓国の二股外交は織り込み済みです。バイデン政権は大統領以下、韓国の恐中病を良く知っています。苦笑いしながら見ていると思います。韓国が二股でも、いざという時は力で抑えつけられるからです。

 北朝鮮の核施設を攻撃する際、韓国の協力は不要です。攻撃機は太平洋に展開する空母かグアム、日本の基地から発進します。韓国の基地は北朝鮮の第一撃で使用不能になる可能性が高いのです。

 もし、米国のお達しを無視して韓国が中国に高性能の半導体を売ったら、日本と共に半導体素材の対韓輸出を止めればいい。韓国の二股が限界を超えたら、お仕置きをする手はいくらでもあるのです。

 問題は日本です。韓国の二股にすっかり騙されているからです。今回の日米韓首脳会談を機に、韓国が日米側に戻ってきたかのような見方が増えている。首脳会談前からそんなニュースがメディアに流されてきました。

 例えば、産経新聞は11月8日「<独自>日韓、インド太平洋連携 首脳会談で初確認へ」で「韓国と初めてFOIPで連携を打ち出し、北朝鮮に対する連携を超えた日韓協力の深化を目指す」と報じました。情報源は日本政府でしょうが、これを読んだ韓国の外交当局は日本の脇の甘さを大笑いしているに違いありません。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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