韓国を日米韓の軍事協力体制に引き込んだバイデン、直後に中国にすり寄った尹錫悦

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「3NO」に違反

 尹錫悦政権にとって痛い指摘です。韓国は文在寅政権時代に中国と「3NO」を約束しました。ミサイル情報の共有はその1条項である「米国とMD体制を構築しない」に違反します。

 ハンギョレの記事も指摘するように、実質的には米国のMD体制下にあったのですが、「米国の情報システムからは独立している」と韓国は言い張ってきた。その建前さえ破綻したのです。

 さらには「日米韓の3国軍事同盟は作らず、それにつながる動きもしない」との条項も破った、と中国は見なすでしょう。安全保障の根幹たる敵のミサイル情報をリアルタイムで共有することにしたのですから、3国軍事同盟への布石と追及されたら韓国は抗弁しにくい。

――ハンギョレは「3NO」違反と指摘したのですか?

鈴置:そこまでは書いていません。「ハンギョレが中国に言いつけ、怒りを呼びさました」と非難されるのを恐れてでしょう。それに、そこまで書く必要はないのです。普通の韓国人がこの記事を読めば「3NO違反と中国が怒って来るだろうな」と思うからです。なお、この記事は最後に国防部の苦しい反論を載せています。

・国防部のムン・ホンシク報道官職務代理は14日の定例ブリーフィングで、「MDを語るにはミサイル開発から戦力化まで同じ水準で行われなければならないため、(MD編入は)拡大解釈だ」と述べた。

保守系紙も不安を表明

 興味深いのは「中国を敵にするな」との声が保守からも噴出したことです。朝鮮日報の社説「中国を狙った韓米日の経済対話新設、対中意思疎通もおろそかにするな」(11月14日、韓国語版)です。

 見出しの「経済対話」とは「日米韓の経済安保対話」のことです。共同声明では方向だけ示されていて名称までは明らかにされていません。日米両政府もそこまで言及していないのに、韓国政府だけが「新設する」と明かしたのです。韓国の「前のめりぶり」が分かります。韓国大統領室の発表から引用します。

・韓米日首脳は先端技術、サプライチェーン、エネルギーの分野でも3国間の協力を強化する必要が高まっているとして、「韓米日の経済安保対話」を新設することで合意しました。

 中国は、半導体での対中包囲網に韓国も参加を決意したと判断するでしょう。米国は台湾、韓国、日本など半導体・同製造装置の供給国に対し、最先端の製品を中国に売らないよう働きかけている最中です。そこで朝鮮日報は社説で中国からの報復も考慮せよ、と叫んだのです。

・これまで韓国政府は米中葛藤局面では戦略的曖昧さを維持するとの名分に、明確な姿勢は避けてきた。安保は米国、経済は中国に依存するしかないという現実の中で、どちらか一方に肩入れできないという悩みのためだった。
・今回のような明らかな韓米日共助と中国牽制のメッセージは韓国外交に負担になるのが事実だ。
・政府は北朝鮮のさらなる挑発を阻止するため韓米日の安保共助を固めると同時に、中国との戦略的意思疎通もおろそかにしてはならない。

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