ゼレンスキーの悲願「クリミア半島の奪還」が現実味 ロシア軍が大苦戦する根本原因とは

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砲弾の重量

 軍事ジャーナリストは「その謎を解く鍵が、クリミア大橋の道路橋脇を並行して走っている鉄道橋です」と言う。

「あくまでもロシア側の発表ですが、道路橋を走っていたトラックが爆発し、鉄道橋を走っていた貨車の燃料タンク車7両が誘爆したと言うのです。ロシア側の発表なので注意が必要ですが、鉄道橋の上でタンク車が燃えている映像は確認できます」

 ロシア軍の兵站を考えると、この鉄道橋こそが重要な意味を持つという。

「ロシア軍は戦車部隊や爆撃機などにかなりの被害が出ているようですが、依然として砲兵部隊は戦力を維持しています。東部戦線では6月ごろ、ロシア軍が榴弾砲でウクライナ軍に猛攻を加え、優勢を確保したこともありました。ここで重要なのが砲弾の重量です。例えば榴弾の場合、1発の重さは40キロから50キロに達します。そして激戦であればあるほど、重い砲弾を大量に輸送する必要が生じるのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ロシア軍がウクライナに侵攻する直前、大量の戦車や兵員輸送車が鉄道で輸送された。貨物列車が大量の兵器を運ぶ様子を映した映像がネット上に拡散したのは記憶に新しい。

旗艦「モスクワ」の沈没

「軍隊が必要とする兵器や弾薬を大量に輸送する手段として、鉄道に勝るものはありません。トラックで榴弾を輸送するのは大変です。ウクライナ大橋の鉄道橋が破壊され今も復旧していないとすれば、南部戦線や東部戦線の補給に甚大な影響が出ます」(同・軍事ジャーナリスト)

 地図を見ると、海路や陸路も存在する。ポイントはケルチ海峡の内側に拡がるアゾフ海だろう。

 例えば、ウクライナのアゾフ連隊がアゾフスタリ製鉄所に立て籠もった戦闘は日本でも大きく報じられたが、製鉄所のあるマリウポリはアゾフ海に面した港湾都市だ。

「もちろんロシア海軍が輸送船を使い、物資をマリウポリに揚陸させることは可能です。加えて、ロシア国内からの幹線道路がアゾフ海沿いに延びています。トラックは鉄道に比べ輸送量は落ちますが、南部の要衝ヘルソンに陸路で物資を送ることもできるでしょう。しかし、海路も陸路も、ウクライナ軍の攻撃を受ける可能性は高いはずです」(同・軍事ジャーナリスト)

 例えば海路の場合、4月14日にロシア黒海艦隊の旗艦・巡洋艦「モスクワ」が、ウクライナ海軍の地対艦ミサイル「ネプチューン」の攻撃を受けて撃沈、世界に衝撃を与えた。

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