「王将」射殺事件 射殺された社長が「鳩レース」で見せた顔が暗示するもの

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検察のゴーサイン

「餃子の王将」を展開する「王将フードサービス」の社長だった大東隆行さん(当時72)が射殺された衝撃的な事件で、特定危険指定暴力団「工藤會」系の幹部・田中幸雄容疑者が殺人容疑などで逮捕された。大東さんと共に愛鳩家で、生前の横顔を知る元山口組系義竜会会長の竹垣悟氏(現在は暴力団組員の更生を支援するNPO法人「五仁會」を主宰)に、大東さんがターゲットとされた理由について解説してもらった。

 事件が起きたのは、2013年12月19日早朝のことだった。自らクルマを運転し、京都・山科区にある王将フードサービス本社前の駐車場までやってきた大東さんは、停車直後に4発の銃弾を撃ち込まれた。

 京都府警は事件からおよそ9年後の2022年10月28日、福岡刑務所で服役中の田中容疑者を殺人容疑で逮捕した。田中容疑者は2018年6月、大手ゼネコン「大林組」社員が乗る車に発砲したとして福岡県警に逮捕・起訴され、実刑が確定していた身だ。

「防犯カメラの映像分析や喫煙所に落ちていた吸い殻の解析などで、京都府警は早い段階で田中容疑者を特定し、事情聴取も行ってきました。しかし、状況証拠の積み重ねによる犯行事実の証明するやり方では十分ではないと、検察はゴーサインをなかなか出さなかったのです」

 と、担当記者。

ヤクザを敬遠していた大東さん

「今年こそ犯人検挙」というのが毎年の風物詩のように語られてきたが、いよいよ検察がゴーサインを出したということなのだろう。

「犯人は収監中であり、今回殺人容疑で起訴されても実態を語るメリットがないため黙秘や犯罪事実の否定が十分に想定される。それを踏まえたうえで、揺るがない客観的証拠だと検察側も認めたのでしょう」(同)

 生前の大東さんのことを知る竹垣氏によれば、

「仕事熱心で朝早くから出社して誰よりも仕事をしていたと聞いています。ホテル1棟を使って鳩を飼う愛鳩家としても知られていました。ただ、鳩レースの愛好家はたいてい、相手がどんな立場・職業でも気にせず付き合う方が多いのですが、大東さんは違いました。知り合った頃は私自身まだ現役のヤクザで、その意味で大東さんには敬遠されている部分があったと思います。暴力団とは接点を持ちたくなかったのでしょう」

 念のため、ここで鳩レースについて説明しておこう。

 鳩は帰巣本能が強い生きものとされ、その習性を生かして、稚内から関東や中京圏までの1000キロ前後の距離を競わせるレースがよく知られている。

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