見えてきたプーチンの大敗北…冬将軍はロシア軍に味方せず、ウクライナ軍は教科書通りの戦術で

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弾薬の浪費

 一般的に「攻める側は守る側より4倍の兵力が必要」と言われているそうだ。

「開戦当初、約20万人のウクライナ軍に対しロシア軍は約90万人と、4倍以上の兵力を擁していました。今回の戦争で、ロシア軍の補給能力は非常に劣っており、それが苦戦の大きな原因の一つと分析されています。90万の軍隊に充分な補給を行えたかは未知数ですが、ロシア軍が北、東、南のうち1方向に戦力を集中させていれば、ウクライナ軍が敗れた可能性も否定できないと思います」(同・菊池氏)

 3方向からの攻撃で、ロシア軍は確かに兵力の分散を余儀なくされた。しかし、迎え撃つウクライナ軍も同じだったはずだ。

 なぜ数的優位を確保していたロシア軍はウクライナ軍に撃退されたのか、それには弾薬の問題が大きな影響を与えたという。

「北海道にロシア軍が侵攻してきた場合、自衛隊は1カ月で40万トンの弾薬が必要だと試算されています。そして、守備側より攻撃側のほうが、更に火力を必要とします。ロシア軍は3方向から進軍したことで、弾薬を猛烈に消費してしまったのです」(同・菊池氏)

 ウクライナ軍が善戦を重ねるほど、ロシア軍の弾薬はどんどん少なくなっていく。そして、火力が不足したロシア軍はウクライナ軍の反攻を許し、戦争は長期化した。これでロシア軍の弾薬が底を突いてしまったことは想像に難くない。

歩兵は不必要

 ちなみにCNN(日本語・電子版)は10月25日、「ロシア前大統領、『兵器不足』の報道を否定」の記事を配信した。

 ロシアのドミートリー・メドベージェフ前大統領(57)が「ロシア軍の兵器や装備品の生産は増加している」との声明を発表したという記事だが、それを信じる西側の専門家は少ないようだ。

「ロシア軍は誘導ミサイルだけでなく普通の弾薬も尽き、戦車や爆撃機を次々と失っています。ウクライナ軍にとっては攻勢の大チャンスでしょう。冬将軍が到来すると、確かに歩兵の作戦従事は難しいかもしれません。機甲師団の役割は、戦車で敵軍を蹴散らし、歩兵が敵地を占領することにあります。戦車と歩兵の重要性は等しいのですが、今はセオリーにとらわれる必要はないはずです」(同・菊池氏)

 厳冬期でも戦車なら戦闘が可能だ。ウクライナ軍は戦車だけを進軍させ、ロシア軍の戦車や陣地を破壊すればいい。

「たとえ兵士による占領地の奪還は難しくとも、ロシア軍に甚大な被害を与えればいいのです。こんな好機をウクライナ軍が逃すとは思えません。冬が訪れたとしても、戦車部隊は砲兵の支援を受けながらロシア軍に攻撃を続けるのではないでしょうか」(同・菊池氏)

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