日米韓共同訓練で韓国の国論は真っ二つに… 迷走の本質は「恐中病」

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 韓国が「親日か従北か」で迷走する。日米との3カ国共同軍事訓練を左派が「日本の再侵略を誘う」と批判。すると保守は「北朝鮮の核ミサイル開発を座視するのか」と反撃した。韓国観察者の鈴置高史氏は「反日騒ぎの本質は中国への恐怖感」と見切る。

豹変した尹錫悦

鈴置:9月30日、日米韓は日本海で3カ国の共同訓練を実施しました。米空母「ロナルド・レーガン」も参加する大規模な訓練で、北朝鮮の潜水艦を捕捉・撃滅するのが目的です。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は変節したのです。この政権は発足前の3月31日に「日米韓の共同訓練は行わない」と表明していました。

 中国の顔色を見てのことです。前の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、いわゆる「3NO」の一環として「韓米日の軍事協力が3国間の軍事同盟に発展することはない」と中国に約束していた。それに金縛りになっていたのです(「『米国回帰』を掲げながら『従中』を続ける尹錫悦 日米韓の共同軍事訓練を拒否」参照)。

 尹錫悦大統領は、ほんの半月ほど前の9月14日にもNYT(ニューヨーク・タイムズ)との単独会見で「3カ国共同訓練は考えていない」と言い切ったばかりでした(「二枚舌外交を極める尹錫悦 米中二股にいら立つバイデンの『お仕置き』のタイミング」参照)。

対潜ノウハウを韓国に伝授

――なぜ、韓国政府は姿勢を180度転じたのでしょうか。

鈴置:安保専門家は米国が猛烈に圧力をかけたと見ています。北朝鮮が弾道ミサイルの発射訓練を日常化しました。巡航ミサイルも加えると、今年1月から10月14日に至るまで、27回に上ります。

 特に神経を払うべきは、発射の兆候を事前に捉えるのが難しいSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)です。日本海の真ん中から撃たれれば、10分以内に東京やソウルに届きます。

 対処時間が短いだけに、迎撃ミサイルで撃ち落とすのが難しい。そこで日常的に北朝鮮の潜水艦を監視・捕捉し、「いざ」の時はSLBMを発射する前に撃沈する必要があるのです。

 海上自衛隊の関係者は今回の合同訓練の狙いを「海自の潜水艦探知技術を韓国海軍に伝授することだった」と説明します。韓国海軍の対潜能力は極端に低い。

 ことに日本海の漁場、大和堆は岩場ですからソナーによる探知が難しい。当然、北朝鮮のミサイル潜水艦はここに潜り込んできます。そこで米国は日本に「探知技術を韓国に教えてやれ」と言ってきたのです。

 韓国海軍とすれば、願ってもないチャンスでした。一方、日本の朝鮮半島専門家の中には「ノウハウの伝授」を危ぶむ声もあります。

 韓国も北朝鮮と同様にSLBMを実用化しました。垂直発射管を備えたミサイル潜水艦の配備にも動いています。核弾頭も決意すれば半年で完成可能と見られます。

 日本に核ミサイルを向ける韓国の潜水艦がいつ登場するか分からない。というのに、それを捕捉する手の内を明かしていいのか、との懸念です。

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