日米韓共同訓練で韓国の国論は真っ二つに… 迷走の本質は「恐中病」

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中国との対決が固定化するぞ

 これを機に、日米韓の軍事協力が一段と進むと見たのでしょう。ハンギョレは「日本と戦略目標違うのに…尹大統領、繰り返し『韓米日、安全保障で協力』強調」(10月7日、日本語版)で次のように主張しました。

・朝鮮半島をめぐる韓米日の戦略的利害関係は異なるにも関わらず、北朝鮮の脅威だけを強調し、日本との軍事協力問題に軽い気持ちでアプローチしているという指摘が出ている。
・国防部のプ・スンチャン元報道官はこの日、「文化放送」(MBC)のラジオインタビューで「日本は中国を考え、韓国は北朝鮮をみて、(安全保障戦略を)樹立する」とし、「合同演習を『単に北朝鮮核問題のために米国や日本が韓国を助けるもの』だという観点でアプローチすれば、失敗することになる」と述べた。

「中国を怒らせる」とはっきりは書いていませんが、「戦略的利害は韓米日で異なる」「日本は中国を見る」との表現で読者に警告したのです。

 同じ日のハンギョレの社説「朝鮮半島対峙、韓米日協力一辺倒で出口が見つかるのか」(日本語版)はもうすこし踏み込んで「中国などとの対決を固定化する」と書きました。

・北朝鮮の挑発に対応する安保態勢の強化は必要だが、3国の戦略的利害の違いも考慮しなければならない。韓米日の軍事密着が強化されればされるほど、偶発的な衝突をはじめとする危機に対する懸念は高まるだろう。今のような韓米日対朝中ロの対決構図の固定化は、韓国の安保を圧迫する重い負担にならざるを得ない。

「パンドラの箱」を開けた

――冷戦時代に戻るぞ、との警告ですね。

鈴置:さらに過激な「中ロと手を組め」との主張も語られています。左派政権で統一部長官として活躍した丁世鉉(チョン・セヒョン)氏が10月5日に、中国とロシアを引き寄せることで北朝鮮が核で米国や韓国を脅せないようにしたうえで、南北米中日ロによる6カ国協議を再開しよう、と提案しました。

 中国包囲網に加わらないどころか「米国と敵対する中ロの側ににじり寄ろう」というのですから、なかなか大胆な主張です。イーデイリーの「5年ぶりの日本上空通過に…『北朝鮮・日本の密着可能性』を提議」(10月5日、韓国語)で読めます。

 日米韓の共同軍事訓練は韓国社会の「パンドラの箱」を開けた感があります。保守は北朝鮮への敵意をむき出しにした。一方、左派は「親日批判」の皮をかぶって米国とのスクラムを拒絶した。国の針路を巡り、国論は二分しました。

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