日米韓共同訓練で韓国の国論は真っ二つに… 迷走の本質は「恐中病」

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日本軍が攻めてくる!

――韓国は国を挙げて「シメタ!」と大喜びしたでしょうね。

鈴置:そうではありませんでした。左派政党「共に民主党」は「親日国防」と激しく非難しました。口火を切ったのは李在明(イ・ジェミョン)代表。2022年3月の大統領選挙で僅差で負けた人です。

 左派系紙、ハンギョレの「韓国の野党第一党代表『韓米日共同訓練は「国防惨事」…極端な親日附逆国防』」(10月8日、日本語版)から10月7日の発言を拾います。なお「附逆」という単語は日本では使いませんが、中国語や韓国語で「寝返り」「利敵」を意味します。

・極端な親日附逆行為であり、対日屈辱外交に続く極端な親日附逆国防ではないかと考えざるを得ない。韓日関係がきちんと確立されていない状態で、日本の自衛隊を軍隊として公に認める根拠になり得る。

 要は日本の軍事大国化を認めるのか、と政府に迫ったのです。さらには、強大化した日本軍が攻めてくる、と国民に訴えました。

・尹錫悦大統領が以前、「日本の自衛隊が有事の際に朝鮮半島に入ってくる可能性もあるが」と言ったことが現実化するのではないか懸念される。大韓民国の国防が大韓民国の軍事安保を守るのではなく、日本の軍事利益を守る行為だ。

 そして、3カ国共同訓練に代表される日米韓の対北牽制が、第2次朝鮮戦争を呼びかねない、と訴えたのです。

・国民は韓米日軍事同盟を望んでいない。朝鮮半島情勢にとてつもない危害を加える可能性があると考えているからだ。国民の間では、このまま行けば再び局地戦が起きかねないという懸念がますます高まっている。

左派に激昂した政権

 政権側はこの発言に激怒した、と報じられました。中央日報の「韓国野党代表の『親日国防』に大統領室が反発…『党首会談の可能性低い』」(10月10日、日本語版)が伝えています。

・「極端な親日国防」と批判した李代表の7日の発言をめぐり、大統領室参謀は週末、激昂した反応を見せた。
・大統領室の関係者は9日、中央日報との電話で「北の相次ぐ武力挑発に対抗して韓日米が緊密な対応態勢を整える中で、大韓民国の野党代表がこれを親日行為と規定するのをみて驚いた」とし「李代表の発言に接した後『国が本当に危険だ』という考えになった」と述べた。
・別の参謀は「北が連日、挑発の程度を高めていくのを目撃していないのか」とし「李代表は本当に我々の国民の生命を守ることに関心はないのか」と批判した。

 着々と核武装を進める北朝鮮が目に入らぬのか――との悲痛な叫びです。北朝鮮は10月16日に始まった中国共産党大会が終わるのを待って核実験を敢行する可能性が高い。

 すでに北朝鮮は核弾頭の小型化に成功した模様で、次の核実験を機に国際社会に核保有国としての扱いを要求するのは確実です。その政治的、軍事的な脅威を少しでも抑えるのが日米韓の対潜水艦訓練の目的。「政権が激昂した」というのも分かります。

 韓国政府としては珍しく「日本の助けが要る」とも表明しました。事実関係には不正確な部分もありますが。大統領室のイ・ジェミョン副報道官は10月11日、CBSラジオのニュース番組に出演し以下のように訴えました。

 中央日報の「韓国大統領室『国家安保のために日本の助け受けられるならば受けるべき』」(10月11日、日本語版)から要約して引用します。

・SLBMはゲームチェンジャーだ。潜水艦がいつどこに現れて弾道ミサイルを発射するのか事前探知がかなり難しいためだ。北朝鮮の潜水艦が韓国領海にだけいるという保障は当然ない。もし日本領海に行ってミサイルを発射すればその時は当然日本の助けを受けなければならない。

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