全てを知った妻の嘔吐にショックを受けて… 41歳夫が「ソウルメイト」と呼んだ女性との関係性は?

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そんなに問題なのか

 それから半年、賢剛さんと絵梨さんの夫婦仲は「冷戦状態」が続いている。必要最小限の言葉しか交わさない絵梨さんに対し、彼は極力、いつもと同じように接している。週末は子どもたちと公園に行ったりショッピングモールに行ったり。絵梨さんを誘っても、彼女は来ようとしない。

「この夏、絵梨が実家に子どもたちを連れていくと言ったんです。それなら僕も一緒に行くよ、夏休みとるからと言ったら『来なくていい』と。『実家の両親の前で、私はあなたと普通に話せないから』って。偏見を持っている人に、どうしてそんなに偏見を持つの、と聞くのは無意味なんですよね。それがわかって僕は心がしずみました。僕がいないほうがいいのだろうか、別々に暮らしたほうがいいのだろうか。悩みました」

 僕が“趣味”をやめたら、絵梨は今まで通り接してくれるのかと問うと、「前と同じようにはならない」との答え。じゃあ、僕はどうしたらいいんだと彼は思わず叫んだという。

「いや、もうこうなったら私の問題かもしれないと絵梨が言い出しました。『私が、そういう趣味をもったあなたを受け入れられるかどうか』なんだと。いや、そこまで言うほどの大問題なの? どうしてそんなに問題なの? と聞きましたが、『どうして、それほどたいしたことじゃないって言えるの?』と返されました。平行線ですね、理解しあうのは無理」

 たとえ受け入れられないとしても、別居するにはお金がかかる。そういった現実的な問題で別居は無理だ。同居のまま子どもたちの成長を待つしかないだろうと賢剛さんは予測している。それなら、もう少し仲良く暮らしていきたいとも思う。

 だがその願いが絵梨さんに届くのかどうか。彼は深く長くため息をついた。

 ***

 賢剛さんと似たケースでは「不倫相手は『人形』だった アパートを借り重ねた逢瀬、それを知った妻の“ドン引き”」のレポートがある。この男性もラブドールの所持が妻にバレ、以降、夫婦の関係は冷めきってしまっていた。

 ただ異なるのは、この男性がラブドールに心を寄せていたのに対し、賢剛さんは“女王様”に恋愛感情を抱かず、指一本触れていないという点だ。冒頭で紹介した定義でいえば「性的関係」はないわけである。

「人の道に外れた」という言葉の定義に照らせば、人と違う性的嗜好をもったという点で「不倫」といえるのかもしれない。しかし一般的な不倫とはやや事情が異なる。はたして賢剛さんの行為は不倫といえるのだろうか。

 冒頭の「どこからが不倫なのか」というアンケートには「性風俗店に行く」という回答もあった。トレンドリサーチで女性の31.9%がそう回答しているが、逆に言えば7割の女性は性風俗店通いを不倫とは感じていないことになる。SMバーから始まった女王様との関係を、その文脈で絵梨さんに説明すれば、今のような事態は避けられたのかもしれない。

 もっとも、女王様を「ソウルメイト」と考えている賢剛さんは、単なる風俗通いと思われたりすることを許せなかっただろう。

 傷ついたという妻を慮る様子もなく、賢剛さんは自分の嗜好が理解されないことを気に病んでいる。「趣味をやめる」と今のところ言っていない。

 結局のところ、女王様との関係を大事にするか、妻の気持ちを尊重するかという2点で、女王様を優先させている。生粋の奴隷といえるかもしれない。それをわ かっているからこそ、絵梨さんの気持ちは冷めたままなのではないか。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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