全てを知った妻の嘔吐にショックを受けて… 41歳夫が「ソウルメイト」と呼んだ女性との関係性は?

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店でだけは「素の自分」に

 それから1年半にわたり、彼はしばしば店に通い、自分の性的な嗜好を徐々に把握していった。

「マキさんからも、立派な変態かもねとお墨付きをもらって(笑)。彼女とは公私ともに仲良くなりました。とはいえ、性的関係はありません。彼女自身、性的欲求がないんだそうです。仕事は天職だと言っていました。僕自身は特殊だとは思わないけど、世間的に見たら特殊な性嗜好で結びついたふたりなのかもしれない。彼女もプレイ相手としての僕はやりがいがあると言ってくれて」

 店でだけは、彼は「素の自分」になれる。一歩外に出たら、企業に勤めるサラリーマンであり、父親であり夫だった。そうすることで人生に張りが出た。生き生きとしている夫を見て、妻は「仕事、うまくいっている? 最近、すごくいい感じに見える」と言った。

「週末は家族最優先に過ごしていましたし、恋愛しているわけではない。ただ、自分の心の奥で求めていたものが見つかったというか。それがうれしかったですね」

 ところがこのコロナ禍で、彼は店に行くのを躊躇した。もちろん、店側も一時的に閉鎖に追い込まれもした。感染対策として、さまざまなプレイもできなくなっている。

「ずっと我慢していました。まれに店に行っても、しゃべるだけ。マキさんも昼間は別の仕事をしていた時期もあります。最近、ようやく店でも少しプレイができるようになりましたが、前のような濃厚接触はしづらいですね」

 ときおり、賢剛さんはマキさんとプライベートでプレイをすることもある。

まったく理解してくれない妻

「今年の春のことです。妻がいきなり、携帯の写真を見せてきた。僕とマキさんがホテルに入るところです。驚きました。なんだこれ、と言ってしまった」

 それはこっちのセリフよと絵梨さんは言った。説明してよと言われて、彼は言葉につまった。

「とにかく浮気ではない。男女関係はない。知り合いというか友だちというか……としどろもどろになってしまって。すると妻は、『あなたの部屋で見つけたんだけど』と縄やちょっとした小道具を出してきたんです。コロナ禍で飲みにも行けないし、少しずつSMプレイ用の道具を集めていたのが見つかった。すべて話すしかなくなりました」

 ただ、絵梨さんは全部聞き終わる前に「もういい」と言った。トイレにこもって吐く音が聞こえたそうだ。吐くほどひどい話なんだろうかと彼は複雑な気持ちになった。

「別に理解してくれなくてもいい。だけどそういう趣味はそれほど珍しいものでもない。トイレから戻ってきた妻に、僕が見つけた新しい世界をそっとしておいてくれないかと頼みました。でも妻は黙ったまま。あなたが女性に鞭打たれて悶えている姿を想像したくないと泣かれました」

 妻が思うほどウエットな世界ではない。むしろもっとドライで、だからこそ無言のうちに魂が交流して……と説明していたら、「わけのわからないことを言わないで」と言われた。

「その人が好きなの? 愛しているの? と聞かれたけど、そういう表現がピンとこない。むしろ、彼女のことはソウルメイトみたいな、信頼関係がすべてみたいな、と言ったら、やっぱり愛しているのねとたたみかけられた。そうじゃないんだと言ったけど、自分でもうまく説明できないわけですよ」

 何をどう説明しても、理解しようとしない人には届かない。賢剛さんは妻の理解を求めようとはせず、「家族を愛している、何があっても家族が最優先だ。それは今までもこれからも同じ」と断言した。妻はますますわけがわからないと嘆いた。

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