国民に知られたくない統一教会と公安警察の本当の関係 昔は頼もしい存在だった?

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、統一教会の関係団体である勝共連合と公安警察の深い関係について聞いた。

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 国際勝共連合は、旧統一教会を母体として、教祖・文鮮明が1968年1月に韓国で創設した政治団体である。同年4月には、日本でも創立された。当時、日本船舶振興会(現・日本財団)の笹川良一会長が名誉会長を務め、政財界の黒幕と呼ばれた右翼の児玉誉士夫が支援した。

「勝共連合の目的は、『地球上から共産主義を完全に一掃する』ことでした」

 と解説するのは、勝丸氏。

「勝共連合は北朝鮮や中国、旧ソ連の情報収集能力に秀でていたので、韓国の大韓民国中央情報部(KCIA)は共産主義国家の情報を勝共連合から引き出していました」

新左翼と戦う

 勝共連合が設立されてから2年後の1970年、日米安全保障条約の自動延長を巡り、第二次安保闘争が起きた。

「学生や労組の左翼運動が最盛期で、日米安保に反対する大勢の学生や労働者が過激なデモを行い、右翼は押されっぱなしでした」

 そんな中、安保闘争で機動隊と闘っていた新左翼(世界革命を目指した反体制運動家)に真っ向から立ち向かったのが勝共連合だった。

「機動隊の近くで、新左翼とまともにぶつかり、殴られても逃げなかった。そのため右翼の人間は、統一教会のカルト的な教義を棚に上げ、彼らを頼もしい組織と見なしていました」

 勝共連合は、機関紙として月2回刊行の「思想新聞」、月刊誌の「世界思想」を発行している。また統一教会の関連会社の世界日報社は日刊新聞「世界日報」を発行している。

「思想新聞や世界日報は、反共的立場から緻密に取材し、共産党の腐敗や矛盾を鋭く追及していました。共産党の内部事情にも精通していて、時には、共産党内部に協力者がいるのではないかと思われるような記事もありました」

 そのため、警視庁公安部や公安調査庁は、思想新聞や世界日報の記者などから情報を収集していたという。

「公安部は統一教会をカルトと認定しているので、監視対象にしています。ですがその一方で、彼らを協力者にしていたのです。公安の捜査員は1970年代から、勝共連合の機関紙や世界日報の記者や編集長と会食していました。『あの記事、なかなか良かったね。記事にしなかったことで面白い話ある?』などと言いながら、話を聞いていました。記者や編集長はさすがに情報源までは明かさなかったものの、情報提供にはかなり協力的だったといいます」

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