ウクライナ危機よりも心配な米国の病 内政に潜む自滅のリスクとは

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「ウクライナの不屈の闘志と西側陣営の支援でロシアに運良く勝てたとしても、浮かれていてはアメリカは過去の歴史上の失敗を繰り返すことになる」(10月5日付ニューズウイーク)

 このように主張するのはステイーブン・ウォルト・ハーバード大学教授だ。

 著名な国際政治学者であるウォルト氏は「ロシア政府の誤算とその軍隊の無能さ、ウクライナ人の不屈の闘志、西側陣営の強力な軍事支援と経済制裁が合わされば、最後に勝つのはウクライナと西側陣営だ」と予測する一方、警戒の念も強めている。

 紀元前431年、ペロポネソス戦争でスパルタとの戦いを指揮したアテネの政治家ペリクレスの演説の一部(恐れるのは敵の武器ではなく私たちの自滅だ)を引用し、軍事的勝利に酔いしれた米国が再び暴走することを懸念している。だが、危機の本質はそこにあるのだろうか。

 米国社会は「病膏肓にいる」と言っても過言ではない状況だ。

 食料価格の高騰で多くの米国民は飢えに苦しんでおり、「食料をとるか薬をとるか」の選択に迫られている(9月27日付ロイター)。

 社会が抱える長年の問題もますます悪化している。

 米疾病対策センター(CDC)によれば、2021年に銃が原因で死亡した米国民は過去最多の4万8000人に上った。2020年の米国における子供や若者の死因のトップは銃器関連だったが、銃が交通事故を上回ったのは史上初めてだ。

「米国人の2割が過去5年間に銃を用いた暴力を経験している」との調査結果もある。

 銃乱射事件も多発しており、銃規制を巡る議論が国を二分する事態が続いている。

 ハーバード大学医学大学院は9月27日「米国の銃による殺傷事件の被害額は年間5570億ドルに達する」と発表した。米国のGDPの2.6%に相当する。

 イエレン財務長官は6月、連邦議会に対して「銃乱射事件は経済も阻害されることから早期の対応を望む」と異例の要請を行う事態となっている。

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