健康長寿のカギは「選択」にあり 「生活習慣改善法」と医療の新常識「SDM」を専門家が解説

ドクター新潮 ライフ

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「医者の言うことは聞け」という国民性

 ここまで日常の「生活習慣」における選択の話をしてきましたが、次に「医療」における選択の話をしたいと思います。

 主義主張からライフスタイルまで、それぞれの価値観(values)が尊重される多様性の時代を迎えています。ところが医療に関して言うと、現状では圧倒的に患者さんは受け身にならざるを得ず、患者さんが「選択する」権利は浸透していません。

 とりわけ日本には、古来「医者の言うことは聞け」という国民性があり、その固定観念は根強いものに感じられます。医師に言われたらその通りにするのが当然だと。しかし多様性の時代に、医療だけ、患者さんに事実上「選択」の余地がないのは不自然です。そもそも、前述の通り医者の不養生という言葉もあるわけですから、医師が「絶対」とは限らない。

欧米で広まる「SDM」とは

 そこで、これからの医療において大事になってくるのが「SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)」です。「協働(的)意思決定」と訳されるSDMの考え方は、すでに1970年代には生まれており、欧米では広まっているものの、まだ日本ではかなりなじみが薄い。医療における選択のキーワードであるSDMを理解するには、「インフォームド・コンセント(IC、説明を受け納得した上での合意)」と比べると分かりやすいでしょう。

 ICは、医師が患者さんについて治療方針を説明し、それでいいかどうかを「YESかNO」で問うものといえます。確かに医師の独断で進んでいるわけではありませんが、「医師→患者さん」という一方通行性は否めません。

 他方、SDMは、医師が患者さんに各治療のエビデンスを示し、患者さんから「私はこうしたい」「私が尊重したいのはこういうことです」といった具合に意見を聞いた上で、医師と患者さんが双方向で治療方針を決めます。

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