健康長寿のカギは「選択」にあり 「生活習慣改善法」と医療の新常識「SDM」を専門家が解説

ドクター新潮 ライフ

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モチベーションの維持とルーティン化

 しかし、行動変容に向けて重い腰を上げたとしても、継続できなければ意味がありません。残念なことに、この点に関しては医学的にも「必勝法」といったような結論は出ていません。人は易きに流れるのですから当然ともいえます。

 では、必勝法がないのであれば習慣付けは無理なのか? そんなことはありません。臨床の経験を踏まえて私なりのコツを紹介したいと思います。それは「モチベーションの維持」と「ルーティン化」です。

 まず前者に関しては「見える化」がお勧めです。例えば、効率の良いダイエット法として話題になった「HIIT(ヒット)」と呼ばれる最大心拍数の80~90%で行うハードな運動をする人と、そうでなく自由に運動する人などに分けて、ノルウェーの70~77歳(平均年齢72.8歳)の1567人を対象に5年間追跡した調査結果があります。

 その結果、ヒットを行った人のほうが自由に運動をした人と比べると死亡率が37%も低い傾向があった。こうした数字をグラフなどにして患者さんにお見せすると、モチベーションの維持に効果的だと感じます。

 また、スマートフォンに血圧などを打ち込み、乱高下して「上がっているのか下がっているのか」が分かりにくい1日単位ではなく、1カ月単位で平均換算する(血圧手帳上で電卓を使ってもできる)。そうすると成果が見えやすく、やはりモチベーションの維持につながると思います。

「緩さ」「楽さ」が大切

 そうはいっても、どうしても飽きてしまうのが人間というものです。その時に必要なのが「究極のルーティン化」です。

 私自身、朝ご飯前の運動を継続するために、最初はiPhoneに表れる数値をモチベーション維持に活用していました。しかし、そのうちにiPhoneを見ないようになり、朝の歯みがき同様、やらないと気持ち悪いというレベルでルーティン化していきました。これが究極のルーティン化です。

 ここに持ち込むためには、とにかく無理をしない。「無理=非日常」を「ルーティン=日常」にするのは、それこそ無理な話でしょう。ですから、極端なダイエットなどは避けるべきですし、運動であれば、疲れて帰ってきてからではしんどいので朝イチにするなど、「緩さ」「楽さ」が大切です。

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