「ウーバー配達員」が手を染めた「女子高生」連続わいせつ事件 ビニール袋越しにキス、イソジンでうがいを強要の不気味

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「許せない、私の生活、青春を返して」

 論告直前に行われた被害者意見陳述では、AさんとCさんの母の書面が読み上げられた。

「事件に遭ってから、毎日毎日、外に出るのが怖くて仕方なく、どこに行くにも送り迎えをする日々です。娘が言っていた言葉は『許せない、私の生活、青春を返して。人の人生を一瞬で壊した。だれがこの気持ちをわかってくれるのか。ママにもわからない。私の青春を返してほしい』です。弁護士から被害弁償の連絡が来たと伝えると娘は『お金じゃないでしょ』と言い、『私の楽しい時間を返してほしい。お金じゃない。いらないよ、絶対』とも話していました。娘は『病気で片付ける犯人がおかしい』と言っています。犯人には極刑を望みます。お金で買えない、娘との時間を大切にしていきます」(Aさんの母の書面)

「事件に遭った日のことを一度も忘れたことはありません。仕事中に娘から『今から帰る。もうすぐ着く』と連絡があってから、突然連絡が取れなくなりました。パニックになり、何があったのかと帰宅すると、今まで見たことのない顔をしていた。忘れることができません。言うことを聞かないと殺されてしまうという恐怖、涙が止まらない、乱暴されて殺される、死んじゃうと思った、と震えて泣く娘を抱きしめ、どんなに怖かったろうと、犯人への憎しみを抑えられなくなりました。次の日からの娘は笑顔が消え『ここにいたくない、学校に行きたくない』と言い、家族が送迎を……今も、家族が後ろにいると、びっくりして泣くことがあります。事件で感じた恐怖は計り知れないと思い、その度に犯人に憎しみを抱きます……」(Cさんの母の書面)

 判決で新井紅亜礼裁判長は「常習性は顕著。被告人に性嗜好障害があったとしても、それをもって減刑には値しない」と求刑通りの懲役8年を言い渡している。

 3人の被害者に対して、後ろから近づき、ナイフをチラつかせ、スタンガンを放電しながら犯行に及んだ藤野被告が彼女たちに与えた恐怖はいまも消えていない。言霊という言葉の意味を説く藤野被告ならば、被告人質問で「偶然」や「運命」などと発した自分の言葉が、3人の被害者やその家族らにどんな思いを抱かせるのか、分からないはずはないだろう。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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