兵士不足のロシア軍は「刑務所で囚人をスカウト」 戦場に送られた3000人は全滅の異常事態 この冬に敗れる可能性

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傭兵との違い

 兵員不足の原因として、徴兵忌避の問題も大きいようだ。ロシアでは18歳から27歳の男性に1年間の兵役が課せられている。

「ウクライナ侵攻では、こうした兵士も『演習に参加する』というウソの命令で最前線に送られたと報道されています。戦場で塗炭(とたん)の苦しみを味わっているのは間違いなく、悲惨な状況は口コミでロシア国内にも伝わっているようです。ロイターは7月、『徴兵拒否の若者が相次いでいる』と報じ、徴兵を避けるため国外に脱出した若者のインタビュー記事を配信しました」(同・記者)

 ある軍事ジャーナリストは「ロシア軍の現状は、あまりにも我々の常識とは違うことばかりで、言葉を失ってしまうほどです」と言う。

「囚人の志願兵を傭兵のように受け止めている向きもあるようですが、傭兵と民間軍事会社では求められる役割が異なります。前者は、戦力不足に苦しむ正規軍が経験豊富な外国人兵士などを雇用し、実際に戦闘行為を行わせます。一方の民間軍事会社は、本来、最前線で戦うことはありません」

 傭兵は、戦場の経験が豊富であるが故に、訓練する必要がない。即戦力だからこそ“商品価値”を持つ。

 対して民間軍事会社の実情は、「強力に武装した警備会社」というイメージのほうが正確だという。補給部隊や駐屯地の警備が主な任務だ。

能力不足の懸念

「ロシアの囚人には、兵士としての経験を持つ者も、持たない者もいます。しかし、傭兵のような“戦争のプロ”ではありません。ロシア軍が新兵訓練を担当するなら、まだ整合性があります。ところが報道によると、民間軍事会社が訓練も行うというのです。果たして彼らがそんなノウハウを持っているのか、疑問視せざるを得ません」(同・軍事ジャーナリスト)

 そもそも囚人は、法律を破って刑務所に服役していたのだ。心を入れ替えて更生しようとする者もいるだろうが、ならず者も少なくないだろう。

 そんな囚人に、いくら釈放と報酬という“ニンジン”をぶら下げたとしても、戦場で上官の命令に従うのだろうか?

「軍律に従うかどうかだけでなく、囚人の“知的水準”も懸念されます。現代の戦争はハイテク化が進み、最前線の兵士でも電子機器を操作できるだけの教育を受けているほうが理想的です」(同・軍事ジャーナリスト)

 例えば、正規のウクライナ兵でも、高機動ロケット砲システム「HIMARS」を扱うため隣国のポーランドで研修を受けた。ロシアの囚人に、そんなことが可能だとは思えない。

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