電気料金の抑制に不可欠な原発再稼働 全く目途が立っていない「柏崎刈羽」「東海第二」原発で政府がやるべきこと

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責任の所在のあいまいさ

 次に日本原子力発電の東海第2原子力発電所だが、再稼働の障害となっているのは自治体が策定する避難計画が存在しないことだ。同原子力発電所の30キロメートル圏内の人口は全国最多(約94万人)なため、住民の避難方法の決定がなかなか決まらず、14市町村のうち9市町村が避難計画を策定できていない。

 政府が今後、原子力発電所の避難対策の策定に積極的に関与するべきだが、「もっと根本的な問題にも切り込む必要がある」と筆者は考えている。

 東京電力・福島第1原子力発電所の事故が起きてから10年以上が経ったが、廃炉作業は遅々として進んでいない。廃炉作業の遅れを伝える報道に触れるたびに、国民の多くは政府が進めてきた政策が重大な災害時にはまったく機能しなかったことを痛感しているだろう。国民の原子力に対する不信感が払拭されていない理由として、重大な事故時における責任の所在のあいまいさが関係していると思う。

 被災した福島の人々に対し、政府は引き続き支援の手を差し伸べているが、その主体はあくまで東京電力だ。原子力損害賠償法は「重大な事故が発生した場合、政府がその被害を賠償する」との原則が決められているが、事故当時、各論が定められていなかったために政府は自らの責任を回避してしまった。「このことが国民の原子力に対する不信感を高めた要因となった」との耳の痛い指摘がある。

 政府に求められる最も必要な対策は、今一度、原子力損害賠償法の原則に立ち返り、「重大な事故が発生した場合、政府がすべての責任を負う」という姿勢を明確にすることで、国民の原子力に対する不信感を少しでも減らす努力をすることではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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