カスハラの7割以上が男性、年代は中高年が大半 コロナ禍で急増した原因は?

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「いいね」で満足するケースも

「若者の中には、直接企業に苦情を訴えるのではなく、SNSで第三者に『いいね』をもらうことで話題の中心になり満足しようとするケースがみられる。企業のクレーム対応は初動が命とされる中、電話や対面ではなくSNSでクレームを公開されると気付くのに遅れ、損失が大きくなる」

 こうした瞬時のSNS拡散を可能にしたのが「スマホ」の普及だ。店に対する不満や店員のわずかな不手際があれば、誰もがすぐに録音・撮影し、即拡散できる環境にある。

 さらに池内氏は、直接クレームを言う場合においても、かつての電話とスマホでは、「落ち着ける時間」に差があると指摘する。

「黒電話の時代、ダイヤルを回している間に心を落ち着かせることができた。固定電話でも電話番号を調べ、ボタンをプッシュする時間があるが、スマホの場合、その場で企業の電話番号を検索して、すぐにコールできる」

国も対策に乗り出しているが…

 深刻化するカスハラには、国も対策に乗り出している。19年に「パワハラ防止法」が成立。それを踏まえて翌年には厚労省が事業主に対し、顧客からの迷惑行為への対応に取り組むよう指針を出した。更に同省は、今年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を策定し、事前の準備、実際に起こった際の対応など、カスハラ対策の基本的な枠組みを企業向けに啓発している。また今年度は、自民、公明、国民民主の三党が、悪質なクレームや不当な要求といったカスハラに関する協議体を設置することで合意している。

 しかし現状、セクハラやパワハラなど、他のハラスメントが世間に認知されている一方で、このカスハラについてはまだまだ浸透していないと池内氏は言う。

「お客様対応されている企業や労働者の中では『感情労働』含め、カスハラに対する意識は高いですが、基調講演などでは聴衆の3割しか知らないことも。世の中の不寛容化が進む中、対策は急務といえるでしょう」

 日本の、恵まれた「お客様中心主義」の実態は、外国と比較するとよくわかる。

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