牛65頭殺傷の最凶ヒグマ「OSO18」 動物愛護団体らからの抗議でハンターが動けない不条理

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「白骨化した牛が何頭も」

 高橋さんの住む標茶町は、北海道東部にある釧路湿原を抱え、人口7千人を数える住民よりも乳牛の方が多い酪農業が盛んな土地。「OSO18」は、高橋さんが最初に目撃した町内「オソツベツ」という地名と、前足の幅が「18センチ」だったことから名づけられた。この雄のヒグマが特異なのは、これまで滅多に狙われなかった乳牛を獲物にしていることだという。

「体長は大人が両手を広げたくらいのサイズで、3メートルほどはあったと思います。実は自分が目撃するより何週間か前、OSOはここから車で10分ほど離れた久著呂(くちょろ)という町の共同牧場で最初に牛を襲って味をしめ、移動してきたようです。そちらでも白骨化した牛が何頭も見つかっていますので」(同)

 この共同牧場で放牧し、最初に被害に遭ったという酪農家の男性(71)にも話を聞いた。

「一気に6頭やられてしまったんですが、ウチの場合は鹿が入らないように牧草地の周りをぐるっとフェンスで囲っていた。だけどクマは下から潜ったりよじ登ったりと自由自在。工事現場などで夜間に発光するLEDライトをつけて、クマが出るところに等間隔でズラーッと並べても効果なし。そこをよじ登って出入りしてくるし、檻を仕掛けても入らない。何をやっても打つ手がありません」

動物愛護、自然保護の団体から抗議が

 地元のハンターたちの集まりである北海道猟友会標茶支部の本多耕平・副支部長(76)に聞くと、

「恐ろしくOSOは頭が良くて、日中はまず姿を見せません。なるべく痕跡を残さないよう河原ではなく川の中を歩いたり、舗装道路に足跡をつけないように橋の下を迂回(うかい)したりして、ハンターの我々にとっても難敵。それらしきクマが無人カメラに映るのも夜中の22時から午前2時くらいまでの真夜中なんですが、法律で日没から日の出までハンターは銃を撃てない決まりになっています。銃器で倒すのは本当に厳しい」

 追い打ちをかけるように熊撃ちのプロたちを悩ますのが、主に北海道外の人たちによる“抗議の嵐”だ。

 猟友会同支部の後藤勲・支部長(78)が明かすには、

「地元の人たちは“襲われる前に鉄砲で撃って下さい”と言うけど、本州の動物愛護や自然保護の団体が“かわいそう”“殺すな”“動物虐待だ”と抗議してきて、ハンターたちは板挟みです。国や道など行政も、檻を設置してOSOを獲ってくださいとは言うけど、それ以外のクマを捕獲したら、できるだけ山に放してくれと。保護団体に配慮し、バカげた話がまかり通っているんです」

 猟友会厚岸支部事務局の根布谷昌男さん(69)が言う。

「OSOは罠の横を通ってもエサに見向きもしない。ふた昔くらい前は希少動物だからと罠にかかっても悪さしなけりゃ山の中に放したりしたので、学習してしまったのかもしれない」

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