依願退職の「警視庁マル暴刑事」 組織がひた隠しにする、もっと重要な捜査情報の漏洩問題

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警察内部のデータベースで

「スポーツジム仲間に暴力団関係者の情報を漏洩した」として、警視庁が王子警察署組織犯罪対策課所属の男性巡査部長A(39)に減給6カ月の懲戒処分を下したのは、去る9月2日のこと。Aは処分と同時に依願退職し、同庁は今後、地方公務員法違反容疑で書類送検することで幕引きを図っている。しかし、実はこの不祥事を巡って、警察組織がひた隠しにする不都合な事案が見え隠れしているのだという――。

 全国紙社会部記者が解説する。

「ことの発端は今年2月。Aがジムで知り合った男性4人とLINEのグループトークでやりとりする中で、ある特定の人物について暴力団関係者であるかどうかを漏らしていたんです。外部からの情報提供があり、警視庁が調べたところ、Aが警察内部のデータベースで当該の情報を調べていたことが発覚しました」

 当局からの聴き取りに対してAは「相手が興味を持ってくれれば、新たな暴力団情報を得られると思った」と話しており、内部調査では、金銭などの見返りは受けていなかったと結論づけているとされる。

 良し悪しは別として、暴力団を担当する、いわゆるマル暴刑事が暴力団側と情報のやり取りをすること自体は珍しくない。

 しかし、このAをめぐっては警視庁内で、さらに重要な捜査情報の漏洩があったのではないかと噂されているのだという。

身内に甘い警察組織

 ある捜査関係者が打ち明ける。

「Aが所属する王子警察署とは別の警察署が、ある指定暴力団の幹部を覚醒剤取締法違反の疑いで捜査していたのですが、事前に捜査情報が組側に漏れて逃走を許してしまった。実は組側に『逮捕状が出ているから逃げた方が良い』と漏らしたのが、他でもないAだと疑われているのです」

 つまり、ジムで知り合った相手に単なる世間話として、重要度の低い情報を漏らしてしまったというレベルの話ではなく、直接、暴力団関係者に逮捕情報を漏らしていたということになる。

 事実であれば、懲戒処分どころの話でなく、犯人隠避容疑などで身柄を拘束されてもおかしくない事案なのだが、ある警視庁関係者はため息交じりに言う。

「“うちの会社”が身内に甘いのは今に始まったことではありません。特に暴力団の捜査を担当する組織犯罪対策部絡みでは、これまでも曖昧な決着で落ち着いた事案が少なくない。数年前にも、一般男性からカネを取り立てようとした暴力団組員に、署内のデータベースで照会した男性の関係先住所を教えた某署の刑事が停職処分を受けましたが、依願退職で済んでいます」

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