金足農「いじめ」、酒田南「喫煙」で選抜絶望…高校野球の不祥事を巡る“根深い問題点”

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後を絶たない野球部内の不祥事

 夏の甲子園も終わって間もないが、既に来年春の選抜高校野球出場を目指した戦いが全国で行われている。そんな中、ショッキングなニュースが飛び込んできた。2018年に吉田輝星(現・日本ハム)を擁して夏の甲子園準優勝を果たし、“カナノウフィーバー”を巻き起こした金足農(秋田)が部内のいじめにより3カ月の出場停止処分となり、戦わずして選抜出場が絶望的となったのだ。【西尾典文/野球ライター】

 また、同じ東北では春夏合わせて11度の甲子園出場を誇る酒田南(山形)も2年生部員11人の喫煙が発覚し、秋季大会の出場を辞退(※その後、1カ月の対外試合禁止処分を受けた)。同じく選抜への道は早くも閉ざされることになった。

 高校野球部内の不祥事による対外試合禁止、出場辞退などは、強豪校でも後を絶たない。今年の夏の甲子園で東北勢初優勝を果たした仙台育英は、2017年11月に寮内での飲酒と喫煙が発覚し、当時の監督が辞任する事態に発展した。

 野球に限らず、他の競技でも不祥事はあるが、公立高校と私立高校、どちらでも指導経験のある指導者の話では、“野球部ならでは”の厳しい事情や、近年取り巻く状況が変わってきている部分もあるようだ。

SNSで拡散されることも

「高校の部活の中では、どうしても野球部に対するメディアの扱いが大きいですから、良くも悪くも注目されてしまいます。公立高校では、それを面白く思わない同僚の教員がいることもありますね。野球部員の生活態度や授業での態度を必要以上に問題視されたことがありました。あと厳しくなっているのは、周囲の目も同じだと思います。今は何かあるとすぐに通報されますし、SNSで拡散されることも少なくない。強豪校の野球部員というだけで、一般の高校生とは同じように見てもらうことは難しいです……。厳しく指導している学校もありますけど、今は指導者も何かあるとすぐに『行き過ぎた指導』とみなされる。もちろん、いじめや喫煙、飲酒などはあってはならないことですが、選手にとっても指導者にとっても息苦しい時代になっているのかな、とは思いますね」(現役の高校野球指導者)

 高校野球の現場では、控え部員がライバル校などの偵察などで球場を訪れているが、強豪校の選手は、ファンに話しかけられていることもよく見かける。また、この指導者が話すように、何かあれば瞬く間に、学校への悪い評判として広がるのが今の世の中である。高校生にとって、「常に見られている」という意識をもって行動するのは、なかなか簡単なことではないだろう。

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