11人圧死の「明石歩道橋事故」から21年 遺族が “悲しいだけ”じゃない本を出版した理由

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安全に勝るものはない

 7月17日の出版の記者会見で、有馬さんは「あの事故でいろんなイベントの安全策が改善されたと思います。ただ『警備が大変なので』ということでイベントが中止されるところも多かったようで、それは残念ですね」と話した。

 有馬さんはこう強調する。

「私たちは事故が起きるまで普通の市民でしたが、事故で生活が一変してしまった。こうした事故は誰もが遭遇する可能性があるということ。安全に勝るものはないんです」

 会見の後、神戸のホテルで開かれた「出版謝恩会」では、久しぶりに遺族らの多くが一堂に会した。事故の後、遺族会の代表として下村さんと共にメディア対応の中心として明るく振舞ってくれてきた三木さんが最後の一本締めに立った。

「21年間、皆さんに励まされて……」と語った途端に、大柄な男の眼から溢れた涙は止まらなかった。

 価格は2000円+税。本の問い合わせは神戸市総合出版センター(078・362・7138)まで。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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