「アレフから娘を取り戻したかった」と元妻を惨殺した男 子どもたちが法廷で明かした“父親の真実”とは

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「オウム真理教を刺してるんだ」

 銃刀法違反と殺人の罪で起訴された西村に対する裁判員裁判は、2011年5月にさいたま地裁(大熊一之裁判長)で開かれた。起訴事実を認めていた西村には、かつての妻・Aさんとの間に、アレフ信者となった長女、次女を含めて5人の子がいた。そもそも、Aさんは1987年頃にオウム真理教へと入信。その数年後、夫婦の離婚が成立した。Aさんは西村の反対を押し切り、子どもを連れて教団施設に出入りしていたという。検察側は、西村がこうした経緯から「元妻を恨み、元妻さえいなければ長女らが教団を脱退すると思った」と指摘している。

 西村はかつて教団の関連施設に張り込むなどして子どもを探し出し、オウム真理教から家族を奪還するため精力的に働きかけを行ってきたという。当時の様子を本人が振り返った手記も過去に出版されている。さらに、事件前にも「何としてでも解決しなければ」などと手記をまとめていた。そこには、事件前年に西村が大腸がんの摘出手術を受けたことも触れられており、「先の短い親の人生よりも娘達の将来の方が大切」とも記されていた。

 娘を救い出すための行動は、西村にとってあくまでも“正義”の行いだった。西村のなかで新興宗教と同化した元妻は、悪そのものだったようだ。被告人質問で犯行について弁護人に尋ねられると、

弁護人「奥さんにかわいそうなことをしたという気持ちは?」
西村「そこもちょっと複雑な気持ちです。宗教さえしてなければ、孫に囲まれて暮らしてた。そういう意味で不幸だと」

 と、殺害してもなおAさんへの憎しみが消えない様子をにじませた。西村に対して検察官も続けて尋ねる。

検察官「『宗教さえしてなかったら』って言いますが、なぜ自分が悪いことをしたという言葉がストレートに出てこないんですか?」
西村「私自身、家内を4回……8回以上刺してた……」
検察官「『Aを刺してるんじゃない、オウム真理教を刺してるんだ』とも言っていましたが、いまだからこそ、元奥さんのことを考えようという気にはなりませんか?」
西村「……」

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