ミャンマー軍事政権が有名モデル2人を逮捕 容疑は「セクシー過ぎる」から

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 2021年2月1日のクーデターで実権を奪取して以来、ミャンマーの軍事政権は民主政府への復帰を求める抵抗運動を弾圧し、国民を殺害するなどの強権支配を続けている。8月5日には有名な2人のモデルを逮捕・起訴したことが明らかになり、波紋が広がっている。

 第一報は軍政支配下にある国営メディアが伝え、それを反軍政の立場をとる独立系メディアが2人の逮捕後の写真と共に報じ、一気にひろまった。逮捕されたのはナン・ムエ・サンさん(34)とティンザール・ウィント・チョーさん(34)の2人で、逮捕容疑は2004年に制定された「電気通信法第33条」違反である。

 これは「国家の安全、法と秩序、社会の平静、国家の連帯、国家経済や国家文化に有害な行為」を取り締まる法律。2人が「インスタグラム」などに投稿した水着やランジェリー姿が「ミャンマー文化を損なった」というのだ。

 2人をいつ逮捕したかについて政権は明らかにしていない(ティンザールさんは7月6日に逮捕されたという情報もある)。独立系メディアが報じた記事には、質素な服装で化粧も薄い二人が、神妙あるいは怯えたようなに見える表情で写っている。

ミャンマーを代表する女優、モデル

 ティンザールさんは1987年に中心都市ヤンゴンで生まれ、東ヤンゴン大学に進学。その後俳優、モデルとして活躍し2019年にはミャンマー・タイムズの「トップ10女優」にも選ばれている。「モエ・ニャ・アインメット・ミュウ(2009)」「真夜中(2019)」「ミャ・ミヤ(2020)など」500本以上の映画に出演したミャンマーを代表する女優といわれ、国民の人気も高い。2019年には出演映画がミャンマー・アカデミー賞を授賞したこともある。

 もう一人のナンさんは1988年生まれで、シャン州クンヒン出身。父親は医師で「国境なき記者団(RSF・本部パリ)」の医療コーディネーターを務めていた。ナンさん自身も医学の道を志し、ヤンゴン第一医科大学を卒業して医師となり、東部シャン州や北部カチン州、西部ラカイン州などの辺境地方で地元病院やNGOで経歴を積んだ。ラカイン州では、少数派イスラム教徒・ロヒンギャ族の難民キャンプでも働いた経験があるという。

 医師として働いていたナンさんはモデルとして活躍してきたが、「あまりに過激でセクシーなため」2019年に医師免許が取り消された過去がある。が、それがかえって人気となり、同年の国際ファッション・ウィークに参加、2020年には独立系メディア「イラワジ」の「ミャンマー・トップ・セクシー・モデル」にも選ばれ、やはりミャンマーを代表するモデルとしての地位を獲得した。

 「セクシー過ぎる」とされたナムさんの写真や動画だが、あくまでビキニ姿やランジェリー姿を披露したもので、日本では特に「公序良俗」を乱すものとはいえない範疇のものだ。女優のシンザールさんも同様で、SNSを見る限り、軍政が指摘する「性的」なものは見当たらないではないという。

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