老人ホーム選びで「口コミ」が役に立たない理由 「24時間看護師常駐」は意味がない?

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「老人ホームは現代の姥捨て山」 プロが教える施設の選び方と「転ホーム」のススメ(後編)

 我が子に迷惑をかけないために施設へ。そんな親心からの入居が、そもそも「老人ホーム観」をゆがめているのではないか。ホームを終(つい)の棲家(すみか)と決めつけるべきではないのでは――。そんな前編(「老人ホームは現代の姥捨て山」 利用者が気を付けるべき施設の「キラーワード」は? プロが明かす)での指摘に続き、転ホームのススメと施設の選び方をプロが指南する。【小嶋勝利/老人ホームコンサルタント】

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「あそこの老人ホームはひどい。体が不自由な入居者が着替えているのに、介護職員はまるで見て見ぬふり。最低のホーム。絶対に親を入れないほうがいい」

 インターネットの書き込みを含めたこうした口コミ情報を、みなさん大いに参考にしているようです。しかし、老人ホーム選びに関しては、こうした口コミはほとんど役に立たないと私は考えます。

 例えば、冒頭の口コミは、一見、ひどい老人ホームの実態を指摘しているように思えるでしょう。しかし、老人ホームの「内側」を知る私には必ずしもそうは思えません。いやむしろ、この種の口コミは、その施設が「良い老人ホーム」であることを証明しているのかもしれないのです。

「転ホーム」のススメ

〈意外な見解を披露するのは、老人ホームコンサルタントの小嶋勝利氏だ。老人ホーム勤務を経た後、現在は公益社団法人「全国有料老人ホーム協会」の業務アドバイザーを務める、老人ホーム選びのプロである。

 講演や著作等で「老人ホーム問題」に警鐘を鳴らし続けている小嶋氏は、前編で、まず最大の問題は入居する高齢者本人ではなく、その子どもが老人ホームを決めている点だと指摘した。

 その上で、子どもが選んだ施設に“入居させられた”親は、そこが快適であろうとなかろうと、人生の最後まで過ごさざるを得ない実態があると解説。事実上、老人ホームは現代の姥(うば)捨て山になってしまっていると語ったのだった。

 そして、姥捨て山と対をなす「入居老人ホーム=終の棲家」という発想に疑問を呈し、状況に合わせて老人ホームを転居する「転ホーム」のススメを説いた。

 そこで今回は、転ホームの話にもつながる老人ホームの具体的な選び方を指南する。〉

一般人の口コミを評価するのは難しい

 なぜ、体が不自由な入居者の着替えを手伝わない施設が良い老人ホームかもしれないのか。それは、そのホームが「自立支援」に力を入れている可能性があるからです。

 みなさんが考えている以上に、介護とは複雑で総合的に捉えなければいけないものです。着替えの件で言うと、単に手伝えばいいというものではなく、入居者の状態によってケースバイケース。そしてその老人ホームの「介護哲学」に合わせて、あえて着替えを手伝わずに、入居者の自立を促すことも必要なのです。

 もちろん、ほったらかしにしているだけではダメですが、介護職員がしっかりと見守っている、そして本当に必要な時だけ手を差し伸べる、こうした「見守り介護」というのも介護のひとつのあり方なのです。

 ですから、「何でもかんでも手厚い介護」を望んでいる人からすれば、確かに冒頭の老人ホームは「ひどい」となりますが、「自立支援」「見守り介護」を希望している人からすれば「素晴らしい」ということになる。つまり介護とは何かを知らない一般の人による口コミを、同じく介護が分からない一般の人が正しく評価するのは極めて難しいのです。

 口コミがあてにならないのであれば、何を基準に老人ホームを選べばいいのか。それは施設の介護マニュアル、介護哲学とでもいうべき「介護流派」をしっかりと自分たちで見極め、理解することです。

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