老人ホーム選びで「口コミ」が役に立たない理由 「24時間看護師常駐」は意味がない?

ドクター新潮 介護 その他

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状況に応じて「転ホーム」する必要が

 こうした現状がありながら、24ナースを掲げる老人ホームは、そうでないホームより月額が5万円程度高いのが相場です。いざという時ほとんど役に立たないサービスに5万円を払うくらいなら、それを孫の小遣いとしてあげるほうが、よほど有意義だといえます。そのお金を使って、孫が施設に会いに来てくれれば、見かけだけの24ナースの安心感よりどれだけ入居者は安らげることでしょうか。

 これまで見てきたように、老人ホーム生活ではミスマッチやオーバースペックが多々あるのに、一度その施設に入居したら、いや、子どもが親を入居させたら、そこが終の棲家となってしまう。これは、私には親不孝に思えてなりません。やはり入居者の時々の状況に合わせて転ホームする必要があると考えます。

 転ホーム――。聞きなれない言葉なのであまりに突飛な発想だと違和感を覚えるかもしれません。そういう人には、次のように考えてもらえると受け入れやすいのではないでしょうか。

 けがや病気をしたら病院に行くのは当然です。骨折したら整形外科に、腹痛を覚えたら内科に診てもらう。骨を折ったから眼科に行こうと考える人はいませんし、お腹が痛いから耳鼻科で診てもらおうという人もいません。それぞれのけがや病気の専門科に行くのは当たり前の話です。

本音は「二度と家に帰ってきてもらっては困る」

 それでは老人ホーム、介護の現場ではどうでしょうか。けがや病気をした時と同じように考えれば、入居者のその時々の状況に合った、ふさわしい老人ホームに移るのは自然のことではないでしょうか。

 例えば、とにかくどこでもいいから親を預かってくれればいいと子どもが切羽詰まってしまう代表的な例として、徘徊等の認知症による問題行動が挙げられます。自分たちでは手に負えなくなった親を受け入れてくれるところが見つかり、ホッとした子どもは、本音ではもう二度と親に家に帰ってきてもらっては困ると思い、そこで思考停止に陥る。そして言葉は悪いですが、その入居ホームに親を終生“閉じ込める”。

 しかし、認知症の問題行動はずっと続くわけではありません。意外と知られていませんが、短ければ半年ほどで問題行動が収まることもあります。徐々に体が弱っていき、いずれは、寝たきり状態に移っていくことも珍しい事例ではありません。

 認知症による問題行動に対処するのが得意な老人ホーム、例えばとにかく「見守り」することに力を入れているホームに親を入居させた場合、最初はそれでいいでしょう。しかし、半年経って親の問題行動が消失し、その後は体が動かなくなり、どうやって穏やかな最期を迎えるかという段階に入ったとしたらどうか。そこで求められるのはつまり、歩けなくなった状況のなかでいかにQOL(生活の質)を保ち、向上させるかになるはずです。

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