老人ホーム選びで「口コミ」が役に立たない理由 「24時間看護師常駐」は意味がない?

ドクター新潮 介護 その他

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老人ホームの専門性を見分けるすべがほとんどない

 ところが、入居している老人ホームは「問題行動対策専門集団」であり、寝たきりとなった入居者のQOLの向上には目も向けていない。この場合、最初の老人ホームに親を入れっぱなしにするのが果たして親孝行といえるでしょうか。同じ認知症といっても、場合によっては、半年経過前と後では症状が全く異なる。病院の診療科に例えるならば、半年経つまでかかっていた「問題行動科」では、半年経過以降の症状には対処できない。以後は「QOL科」で診てもらうべきなのです。

 そのためには、事実上、老人ホーム選びの決定権を持っている子どもが、この老人ホームは何に強いのか、あそこの老人ホームの介護流派や専門性は何かを知る必要があります。

 しかし、率直に申し上げて簡単なことではありません。なぜなら、老人ホームも売り上げを立てなければならない。当然、多くの入居者を確保する必要があります。したがって間口は広げられるだけ広げる。専門性、得意分野を掲げると、入り口で入居者を制限してしまうに等しいので、老人ホームはそのような愚は犯しません。つまり、ユーザーにしてみれば、はなから老人ホームの専門性を見分けるすべがほとんどないのです。

 それでも各老人ホームの特質を「素人」が見抜くこともできなくはありません。時間を掛けて、真剣に老人ホームについて勉強するのです。それも、実際に老人ホームに入居する何年も前から。

複数の専門家に相談

 そう言っておきながら何ですが、現実的にはまず不可能でしょう。私は講演等で老人ホームについて、事前に時間を掛けて勉強する必要性を説き、聴衆のみなさんもうなずきますが、正直に言って、夏休みの宿題と同じです。やはり、切羽詰まった状況に追い込まれないと勉強などしないものです。

 ですので、実際問題としては、全国各地にある老人ホーム紹介センターの相談員などその道の専門家に相談してみるのがいいと思います。それも、できれば複数の相談員と話すことをお勧めします。相談員にも、その人の「流派」があり、勧めてくる老人ホームが異なるからです。複数の相談員と話し、気の合う相談員を見つける。気が合う、それは自分たちの望みと相談員の流派がマッチしたことを意味します。

 ここまでの話で、理念としての転ホームは理解できても、しょせんは理想論に過ぎず、やはり現実問題としては難しいと感じる人もいるのではないかと思います。実際、転ホームは決して易しくはありません。しかし、それでも私は転ホームを検討すべきだと考えます。

 大前提として、前回でも述べた通り、何千万円もする入居一時金を払ってしまっていると身動きがとれなくなるので、入居一時金がないホームに入っておく必要があります。

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