“逮捕状握り潰し”中村警察庁長官は国葬を待たず辞任すべきか 伊藤詩織さんが勝訴後に語った思いとは

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「官邸の番犬」と化す警察

 しかし、当時、警視庁の刑事部長の職にあったのが、他ならぬ中村氏、その人。直前に逮捕の中止を命じ、身柄拘束は取り止めに。

 中村氏は週刊新潮の取材に、「私が決裁した。指揮として当然」と、認めたのだ。

「中村氏が刑事部長時代、政権との窓口になったのが、当時、警察庁官房長だった栗生氏。これ以降、栗生氏も一層、中村氏を取り立てるようになった」(同)

 伊藤さんはその後、山口氏に対し損害賠償請求訴訟を提起。折しもこの7月7日、伊藤さんの勝訴(一部名誉毀損については敗訴)判決が最高裁で確定している。彼女は20日の会見で、

「中村氏には、トップに立つ者として決断してきたことにここまでいろいろな質問が投げかけられている中、答えを出さないということには、現在でも私の中で気持ち悪いものがあります」

 などと心情を明かした。都合の悪いことには口を閉ざす「気持ち悪さ」は今回も遺憾なく発揮されている。

 安倍総理のため、お友達記者を守って「官邸の番犬」と化し、いよいよ政権の覚えめでたい存在に。そうして逆転で警察組織の頂点に昇り詰めた男が、肝心かなめの所で最も大切な元総理の命を守れなかったのは皮肉と言うほかあるまい。

警察力が落ちた原因は

 先の元警察庁幹部は今回の失態の背景をこう探る。

「近年、警察が政治におもねり、その距離が近くなり過ぎた感があります。本来の仕事を全うするより、官僚人事を左右できる有力政治家に取り入り、政治力でポストを手に入れようとする人が出てきた。その分、警察力が落ちているのではないでしょうか」

 さらに続けて、

「安倍さんの遊説日程が直前で変更されたといいますが、言い訳になりません。その日の朝、県警本部長が警備担当者らを集め、“背後の警備はどうなっているんだ”などと質問攻めして詰めれば、それだけで現場の意識は変わるはずなんです。ただ昨今、警察でも部下を質問攻めにすると、パワハラと非難されるそうで……」

『男の引き際』の著者で、ノンフィクション作家の黒井克行氏はこう喝破する。

「今回わかったのは、市民の盾たる警察に信頼がおけなかったということです。絶対的な信頼の上に立つその盾が信頼を損なえば代えるのは必然です。国民の命と治安を守るのは一分一秒を争う戦い。悠長に検証している間にも、我々の命が危険にさらされます。名誉挽回のチャンスなどありません」

 それでも、中村長官が地位に恋々とするなら、最後は岸田総理が決断するほかないのだが……。警察庁に長官の進退について質したが、返答はなかった。

週刊新潮 2022年8月4日号掲載

特集「底なし政界汚染 安倍元総理と『統一教会』ズブズブの深淵」より

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