売上ノルマなし、帰宅は終電で… Z世代の歌舞伎町「医学部ホスト」が語る“ホワイト”な働き方

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 一見華やかなホストの世界が、じつは体育会系でキツイ環境であることは知られた話。ゆえに「ナンバーワン」の座を掴んだ者は尊敬を集めるのだろうが、今回話を聞いたホストはかなり“ホワイト”な条件で“ゆるく”働いているようだ。『売る男、買う女』(新潮社)などの著書があり、自身も夜の世界の仕事で働いた経験のあるノンフィクション作家の酒井あゆみ氏が取材した。

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 ホストクラブの聖地・歌舞伎町を何十年も取材してきたが、ホスト達の過酷なエピソードには事欠かない。

 今のようなシステムは1999年の「ホストブーム」によって作られたところが大きいが、昭和から平成初期の時期のホストは、携帯電話もなく、客を店に呼ぶのに必至。指名ノルマをクリアできなかったら罰金で、遅刻にも数分単位で罰金が課される。昔取材したホストは渡された給料袋の中に入っていたのは紙一枚だけだったと語っていた。――罰金伝票である。それが何ヶ月も続いたなんて話もよく聞いていた。そもそもの待遇も現在ほどよくはなく、日給2500円が出たら「そんなに出るんだ」と言われていたのを思い出す(現在は6000~7000円が相場だとされる)。

 稼げないホストにしてみれば、働くほど赤字が増えていく。しかし罰金を支払う為に店を辞めることは出来ない。「ツケ」を回収するために、ホスト一人一人に消費者金融の担当がいたほど回収率が悪かったと聞く。

 そんな環境だから、歌舞伎町のホストは定着率がすこぶる悪かった。それでもホストクラブがどんどん増えていったのは、それだけ新たに働きに来る男が多いのだ。「ホストをやるなら一度はテッペン!、歌舞伎町で勝負するのが男」という思考があるらしく、また、自腹を切って売り上げを作り「ナンバー入り(ランキング入り)」を保つ輩もいた。そんなホストたちの「志」と「見栄」のおかげで、店側は儲かるシステムをきっちりと構築してきたといえる。

 こうした従来のホストと一線を画す働き方を、美樹(仮名=23=)はしている。

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