ピーマン嫌いの子どもに「細かく切る」は逆効果 苦みを抑える調理法とは

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野菜嫌いを克服! 子どものピーマン嫌いは調理法で工夫を!

 子どもが嫌いな野菜の代表格「ピーマン」。独特の風味や苦みが苦手でなかなか食べてくれず、ピーマンのハードル高すぎ…と困っている方も多いのではないでしょうか。

 植物学や農学といった科学的見地から書かれた食に関するベストセラーを数々世に送り出している稲垣栄洋さん(静岡大教授)の著書『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか』では、料理のおいしさの秘密や食材の謎などを解き明かしています。

 調理の裏ワザも多数紹介されている同書から「ピーマンが嫌いな子どもでもおいしく食べられるコツ」を紹介します。

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緑色のピーマンは未熟な果実

 緑色のピーマンは、ビタミンCが豊富で夏のビタミン供給源として優れていますが、残念ながらいつも子どもたちの嫌いな野菜の上位に入っています。

 植物の果実は、種子が熟すと甘くなり、赤く色づきます。しかし、熟さないうちは緑色の状態で身を隠し、苦味成分を持って動物などに食べられないようにしています。

 つまり、私たちが食べている緑色のピーマンは、まだ未熟な果実なのです。だからそこには、苦味成分が含まれているのです。

 人間や動物は、危険なものを食べてしまわないように、危険を感じるセンサーとして味覚を発達させてきました。その結果私たち人間は、腐ったものは酸味として、毒性の物質は苦みとして感じるようになりました。

 子どもたちの味覚は、生きることに対してきわめて素直です。子どもたちは、有毒な成分であることを示す苦みを敏感に感じ取り、とてもいやがります。一方、甘みは、果実の味です。現在では甘いものが健康を害するまでにあふれていますが、自然界の甘い果実に危険なものはありません。だから、子どもたちは甘いものを喜ぶのです。

 つまり、子どもたちが苦いピーマンをいやがるのは、正常な感覚なのです。食べられたくないという緑色のピーマンと、苦いピーマンを食べたくないという子どもたちの利害は一致しているのです。ところが、複雑な味覚を求める人間のおとなたちは、苦みがおいしいといって、わざわざ未熟なピーマンを食べるようになりました。ピーマンと子どもたちにとっては、ずいぶんと迷惑な話です。

ピーマンの苦みをなくす方法

 どんなに味付けをしてみても、どんなに細かく切り刻んでも、ピーマンが嫌いな子どもは、その風味をたちどころにかぎ分けてしまいます。

 ただし、ピーマンの苦みをなくすことはそれほど難しくありません。ピーマンの苦味物質は、加熱すれば分解されます。そのため、火を通せば苦みを取り除くことができるのです。

 しかし、ピーマンを料理に使うときは、多くの場合熱を通しているのに、苦みが残っています。これはどうしてなのでしょうか。

 じつは、ピーマンを切ると、苦味物質が酸素と結び付いて分解されなくなってしまうのです。子どもたちの目をごまかすために小さく刻んだりすると、酸素と結びつきやすくなって、かえって逆効果です。ピーマンの苦みを取るには、切らずに熱を通すのがいちばんいい方法なのです。バーベキューで豪快に丸ごと焼いたピーマンなら、子どもたちもおいしく食べることができるはずです。

 もし、ピーマンを切ってから調理する場合には、切る前に一度ゆでて下ごしらえすると、苦みを抑えられます。

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 食材を知り、味わうことは食育の意味でも大切です。子供が食に興味を持ち、食べることの大切さを知るきっかけにもなります。料理と食材に隠された「おいしさの科学」の秘密を知ることで毎日の調理と食事がグンと楽しくなるかもしれません。

『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか―食材と料理のサイエンス―』より一部を抜粋して構成。

デイリー新潮編集部

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